ハーベイ・カイテル (今週のスター)

目立たず焦らず着々と頂点に向かう

 カイテルの映画人生は、ニューヨーク大学に入学したことが発端である。そこでマーチン・スコセッシと良き親友になるが、カイテルは俳優になるために勉強し、スコセッシは監督になるために勉強した。そしてスコセッシが最初の映画「ドアをノックするのは誰?」(68)を作るとき、カイテルに出演を頼んだ。この作品で二人仲良くデビュー。カイテルはその後もスコセッシ映画の隠れキャラとしてしばらくはほとんどの作品に出演していた。「ミーン・ストリート」(73)では主演もやり、脚光を浴びた。「最後の誘惑」(88)でのキリストの一番弟子の役も忘れがたい。

 僕は以前「スモーク」(95)の上映会に行ったことがあるのだが、そこでカイテルの全出演ビデオをダイジェストで見せられた。司会者の解説もあって、わかりやすい上映会だったが、そこで思ったことは、カイテルが意外にも地味だったということだ。”時”を撮影する男を演じた「スモーク」でも、地味な演技が深い感動を呼んだ。
 カイテルは映画ファンなら誰でも知っているが、一般人にとっては全くの無名であろう。ブラピのように美形でもなければシュワちゃんのようにアクション派というわけでもない。かといってイーストウッドのように渋味があるわけでもない。普通のスターとはまるで性格が異なるのだ。また主演よりも脇役の方が多い。じゃあなぜ人気があるのか? 彼の人気の秘訣は、エキセントリックな雰囲気にあるのではなかろうか? だから「ピアノ・レッスン」(93)や「ユリシーズの瞳」(95)など、わりと文学的な監督の作品に出演する機会にも大変恵まれている。カイテルは目立たず焦らず、着々と名役者の道を歩んでいるのだ。

 皆さんは「レザボア・ドッグス」(92)のカイテルに”男”を感じて、あれが一番好きだと思うが、ちょっと前の作品には「デュエリスト-決闘者-」(77)という、これぞ”男”って映画もあった。「バグジー」(91)、「バッド・ルーテナント」(92)、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(96)もなかなかいい味出しててお薦めだ。「天使にラブ・ソングを・・・」(92)は笑えた。最近は「U-571」(99)でもまたカイテルらしくて良かったな。

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