ウィリアム・ハート (今週のスター)

演技派から個性派へ
 ウィリアム・ハートは、80年代と90年代で、ずいぶんと印象が違う。80年代は演技者として評価された10年間である。「白いドレスの女」(81)に始まり、「再開の時」(83)、「蜘蛛女のキス」(85)、「愛は静けさの中に」(86)、「ブロードキャスト・ニュース」(87)、「偶然の旅行者」(88)と、出る映画ほとんどが大成功。アカデミー賞に3年連続ノミネート(最初の年は受賞も)と、乗りに乗っていた。オカマ役など、演技の幅も広く、演技者として評価された10年。いかにもアメリカのビジネスマンらしい風貌が受けていたこのころと比べて、90年代は明らかに役柄が変わった。とくに「スモーク」(95)は、ストーリーよりも、役者のセリフと演技が作品の質を決める映画だったため、ウィリアム・ハートの真の才能が発揮した彼の代表作になった。ひげ面と薄くなった髪。見るからにいい味がにじみ出ていたものである。それがターニング・ポイントとなり、ハートは演技派俳優から個性派俳優になった。個性派となると、出る役は限られてくるが、だからこそ、ハートにしかできない役というのが見えてきた。ややSFづき、「ロスト・イン・スペース」(98)など、いくつかのSF映画に出るが、これらもまた見事に役にはまっていた。チョイ役が増えてくるが、仕事がないのではなく、リスペクト的な意味合いによるキャスティングである。「A.I.」(01)のロボット会社の重役など、出番は少ないが、この役もウィリアム・ハートしか考えられないだろう。

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