ドリス・デイ (今週のスター)

庶民的でいうところでモンローをしのぐ
 アメリカではマリリン・モンローに負けない大スターだった女優なだけに、今も熱狂的なファンが多く、ファンページもかなりの数がある(僕奴がここで書くのは痛みいります)。 人気だけでなく、稼げる女優としても知られており、ハリウッドのマネー・メイキング・スターではトップクラスの常連で、62年から64年まで3年連続第1位という目覚ましい記録も残した。
 ここで気になるのは、ドリス・デイとマリリン・モンローが同じようにアメリカの国民的アイドルでありながら、今では相当に格の差があることだ。違いは何かというと、モンローは人々が憧れる、正真正銘の銀幕のスターであり、雲の上の存在(すでに故人となった)であるが、ドリス・デイの人気はというと、あくまでモンローとは対照的で、手を伸ばせば届くような「庶民らしさ」にあった。顔だってそばかすだらけである(そばかす顔は男の子からモてる。頬がやわらかく見えるからだ)。「知りすぎていた男」(55)以外にとくにこれといって優れた名作には出ていないし、もっぱらアメリカの大衆映画女優といったランクだった。
 当時はテレビよりも映画が栄えていたが、ドリス・デイの映画はさながらテレビ番組を見るような気分だったのかもしれない。アメリカ人たちはドリス・デイの温かい歌声を聞いて、一週間の疲れを癒していたのだろう。観客を裏切らないため、刺激のある出演作が少なく、今では「レトロ」で片づけられてしまうものばかりであるが、そういうレトロ気分を味わいたければドリス・デイの映画が一番だと断言できる。
 僕が個人的に好きだったのは「スリルのすべて」(63)という作品で、ドリス・デイはごくありきたりな家庭の主婦。ある日彼女は広告業者に見いだされて、巨大看板のモデルになる。旦那はびっくり。 いかにもアメリカ人らしいジョークにあふれた掘り出しものだった。歌が聴きたいのなら「先生のお気に入り」(58)が一番。
 ドリス・デイ。その普通ぽい笑顔が最高に愛くるしい女優で、そのところではモンローなど目ではなかった。

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