トム・ハンクス (今週のスター)

大御所俳優と互角の存在であり、無論90年代では最高の演技者だ。

 「ビッグ」の演技が注目される

 トム・ハンクスは、最近の映画の顔といっていい。立て続けに話題作に出演している。
 ハンクスの映画人生の発端は、「スプラッシュ」(84)。これで人気が出て、以後出演依頼が殺到(?)する。そして出世作は何と行っても「ビッグ」(88)。体だけ大人になってしまった少年をコミカルに演じて、アカデミー賞の主演男優賞にまさかのノミネート。無垢な少年の目を演じるトム・ハンクスはまさに素晴らしかった。僕はいまだに「ビッグ」をトム・ハンクスの最高傑作だと思っている。


 オスカーを二年連続で受賞!!

 ハンクスの猛進撃が開始するのは、「フィラデルフィア」(93)からである。エイズに侵された青年という今までとはタイプの異なる人物を演じ、念願のアカデミー賞主演男優賞のオスカーを手に入れた。この年、ハンクスは「めぐり逢えたら」(93)でも好印象を残している。
 そして翌年、アメリカ中を熱狂の渦に巻き込んだ「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94)で、往年のハリウッド映画の主人公を思わせるバカ正直な青年を演じ、再びオスカーを受賞。トム・ハンクスはタイミングの運もあって、二年連続受賞という快挙を成し遂げたのである(今までの記録では、二年連続で受賞した俳優は、スペンサー・トレイシーとハンクスしかいない)。アカデミー協会も、まさかこんなに嬉しい愛国映画が翌年作られるなんて、「フィラデルフィア」を見たときには、予想もしなかっただろう。
 95年には「アポロ13」「トイ・ストーリー」で活躍し、どちらも批評家から絶賛された。
 最近は「プライベート・ライアン」(98)、「グリーンマイル」(99)が記憶に新しいが、ハンクスの作品のほとんどは、アカデミー賞で健闘している。
 芸能界では、作品の質が、主演役者の評価を高めるというケースが多いが、ハンクスの場合は、演技が作品の評価を高めている。その点が、ポール・ニューマンのような大御所と互角に張り合える理由である。

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