テレンス・スタンプ (今週のスター)

アク役続けて40年
 テレンス・スタンプは僕が最も好きな「アク」役だ。アク役、つまり、アクの強い俳優。名前の語感からして、なにやらアクが強いが、実際出演作も大変なアク役ばかり。本当はハンサムなのに、それでも彼はアク役にいそしんだ。カンヌ映画祭の最優秀演技賞に輝く「コレクター」(65)は、ごく普通の女の人を自分の家の地下室に閉じこめる変態役。同系統の映画「サイコ」の機械的なアンソニー・パーキンスとは対照的に、テレンス・スタンプの役はピカソを批判するような、妙に人間くさい哲学観を持つアク役だった。「サイコ2」の監督が「リンク」(85)に彼を起用した気持ちもよくわかる。
 デビューから2作目「奴隷艦隊」(62)にしてアカデミー賞にノミネートされる有力株だったスタンプは、「世にも怪奇な物語」(67)、「テオレマ」(68)など、順調に活動を続けていたが、ある日失恋のショックから映画界を引退。インドを放浪することに。およそ10年のブランクを置き、「スーパーマン」(78)でカムバック。続く「スーパーマンII」で地球制服をたくらむ宇宙犯罪者役を好演。ずっとポーカーフェイスで、オールバックの髪型と黒服がよく似合っていた。一息でビルを吹き飛ばすほどの超能力の持ち主で、スーパーマンが危うくやられてしまうほどの強敵だったが、これも「コレクター」のナルシスティックな役柄の延長といえた。アク役ばかり演り続けて40年。顔が今もまだ若い! ここ数年でも、「スター・ウォーズ エピソード1」(99)、「イギリスから来た男」(99)、「レッド・プラネット」(00)、「ホーンテッド・マンション」(03)と、毎年2本のペースで出演。現在もアク役の腕に磨きをかけている。
 彼のキャリアの中で、最も賞賛すべき「プリシラ」(94)。オカマちゃんという究極のアク役である。本人は大まじめ。いや、このスタンプの演技には本気でじーんとくるものがありました。僕が知るオカマ役の中でも、最良の演技です。

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