デビッド・ニーブン (今週のスター)

「イギリス人」をコミカルに演じたイギリス人
 イギリス紳士の代表格。半分はアメリカ映画、半分はイギリス映画で活躍したが、アメリカ映画でもイギリスを舞台にした作品や、はたまた「アメリカに住んでいるイギリス人の役」ばかり。この位置づけは名優ロナルド・コールマンにも通じるが(ニーブンもコールマン髭をはやして気品を出している)、ニーブンはそれ以上である。彼ほどイギリス人くさい俳優はおらず、とにもかくにも英国人役に欠かせない人材であった。
 その才能がもっとも生かされているアメリカ映画は「八十日間世界一周」(56)だろう。アメリカならではの壮大なスケールのコメディで、英米仏独の有名映画俳優たち40人が一堂に会する。ニーブンはその中心人物であり、プライドが高く、几帳面な紳士をクールに演じていた。ニーブンが同作で演じたキャラクターは、「イギリス人」そのもののパロディとも解釈できる。
 コメディ作品が多く、ちゃきちゃきの「イギリス式ジョーク」というものがどのようなものか死ぬまで体現しつづけた功績は大きい。長い競演者であったピーター・セラーズとは、しばしば並び称される。「007/カジノロワイヤル」(67)はボンド・シリーズに入れていいのか疑問に思うほどハチャメチャな作品。出番が少ないこのボンド役にニーブンを選んだのは原作者イアン・フレミングだった。フレミングはニーブンの英国人気質を買っていたのだ。
 イチオシの作品は「天国への階段」(45)。カラー映像が鮮やかで、ニーブンの若かりしころの演技を堪能できるだろう。シリアスが見たいなら「旅路」(58)、アクションなら「ナバロンの要塞」(61)をおすすめする。

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