チャン・ツィイー (今週のスター)

 洋画の一番いいところは、出演者が外国人ということ。外国人だから身近ではなく、冒険心がある。しかし中国映画となると、顔が日本人に似ているために、金髪ギャルにはない親近感を抱かせる。日本人だと多すぎる既成概念が想像力の妨げとなる時があるが、中国映画ではそのようなことがなく、自分だけの理想の女性像を膨らませて、どっぷりと映画の世界に浸かることができる。
 初恋のドキドキを映像表現する「初恋のきた道」(99)は、一見女性映画のようであるが、先ほど述べた理由を考慮すれば、どちらかというと男性のための映画であることが理解できる。同作ではとにかくチャン・ツィイーのクロースアップ映像が多い。そしてチャン・ツィイーは表情だけで、ドラマのすべてを表出してみせる。飾り気がないところがチャン・ツィイーの良かったところで、だからこそ表情が活きる。遠くにいる憧れの人をそわそわしながら見詰める眼差し。目があった瞬間、怖くなって目をそらしてしまうしぐさ。男が村を出るといい、髪飾りをもらうまでのシーンのチャン・ツィイーの表情の変化は素晴らしすぎる。悲しげな表情、嬉しそうな表情。しぐさのひとつひとつが観客の想像力を刺激し、シンプルなストーリーであることが、見る者の青春をオーバーラップさせるゆとりとなる。

 まだ出演作は少ないが、対極的な最初の出演作2本(もうひとつは「グリーン・デスティニー」)だけでほぼ人気を不動のものにした。チャン・イーモウ、アン・リーの後にはツイ・ハーク、ウォン・カーウァイの作品も待っている。この先もっとも期待していい国際女優である。

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