スティーブン・ボイド (今週のスター)

当時は異色アクターと言われていたのだが
 スティーブン・ボイドの良いところはテレビ映画チックなところかもしれない。個性派俳優というよりは二枚目役のイメージが僕にはあった。サンダーバードみたいな顔つきが、いかにも色男そのもので、ダンス・パーティで綺麗なドレス姿の女性に、ワイングラス片手に、洒落た口説き文句を投げかけてそうな雰囲気がある。お昼のテレビ映画を見ていると、こういうシーンがしょっちゅう見られるものである。僕はボイドを「お昼の俳優」と決めつけていたくらいである。
 ボイドの作品で、僕が最初に触れたのは「ミクロの決死圏」(66)である。妙にテレビ映画チックなSF映画だと思った。ボイド演ずるは、ラクウェル・ウェルチにキザ台詞で言い寄るハンサム・ガイ。これが僕の中での彼のイメージを決めさせたと同時に、アメリカ映画の二枚目役者像を見た気がした。「アメリカの男は、いつもこうやって女を落とすんだな」と。しかし後々、他の作品を見てみると、このイメージは彼の才能の一部にすぎないことがわかった。
 「ベン・ハー」(59)の悪役が大成功したせいで、そのイメージがかたまってしまい、「ローマ帝国の滅亡」(64)、「ジンギス・カン」(65)、「天地創造」(65)ほか、史劇の出演も目立つ。たしかに割れたアゴが昔の人っぽい。
 他の出演作に、ミュージカル「ジャンボ」(62)、社会派「脱走」(62)、映画業界の内幕を描く「オスカー」(66)がある。活動当時は、映画の雰囲気を変える異色アクターとして、多方面のジャンルに出演し、人気があったのだが、今では忘れられた存在である。僕はそんな消えゆくスターたちを愛さずにはいられない。

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