ジュディ・ガーランド (今週のスター)

名声に身を滅ぼされた最初のスター
 数々のミュージカル映画でヒットナンバーを残し、『ジュディ・アット・カーネギー』で歌手としてもグラミー賞を受賞、「ミス・ショウビズ」という言葉だけでは褒め足りない、ハリウッドの神話的な女優である。
 ジュディが雲の上のスターになれたのは、とにもかくにも「オズの魔法使」(39)で演じたドロシー役があってこそだ。このときジュディは16歳。愛くるしい容姿と、大人のような歌声が評判になり、挿入歌『オーバー・ザ・レインボウ』も大ヒットした。しかしこれがくされ縁となり、その後のジュディの人生から決して切り離せない呪縛となる。ドロシー役は本当に可愛かったが、成熟してからも映画会社は「ドロシー再び」とトップスター・ジュディ・ガーランドの育成に躍起になり、ジュディにハードスケジュールをこなしてもらうよう睡眠薬を飲ませた(ジュディ自身も拒否しなかった)。表向きは成功だった。ちょうど戦時中ということもあり、ジュディのういういしさ、はつらつとした歌声は、国民に生活の楽しさを思い出させてくれた。日本よりも母国での人気が圧倒的に高いのも、戦争の影響である。一方で、舞台裏のジュディは、過度のストレスで、精神を病んでいたのである。ジュディはなかなか芸達者で、ジョークがうまい人だったが、「私が鍵穴からのぞこうとすると、決まって誰かが、あっちからのぞき見ているの」という自虐的な冗談を言うことも少なくなく、いかにジュディが病んだ女優であったかがうかがえる。健康な生活と、名声のどちらを選ぶかとなると、ジュディにとっては名声しか考えられなかった。映画にとりつかれたことで命を縮め、急速に老化していったジュディは、47歳にして急死する。ジュディはいわば、名声に身を滅ぼされた最初のスターだった。

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