シャーリー・マクレーン (今週のスター)

ラッキーガールから大女優へ
 シャーリー・マクレーンは、もともとは舞台女優で、あるミュージカルの主役の代役として働いていた。代役だったのでなかなか出番はなく、それなのに主役と同じ芝居を覚えなければならなかったので、少なからず悩みはあったはず。しかしある日、主役の女優がつまずいて怪我をし、シャーリーにチャンスが回ってくる。この晴れ舞台、ここぞとばかりに存在感をアッピール。それを見たプロデューサーのハル・B・ウォリスはシャーリーに惚れ込み、8年間の契約を結ぶことに。同じ頃、アルフレッド・ヒッチコックもシャーリーの舞台を見ており、「ハリーの災難」(55)にシャーリーを起用することを決めた。ヒッチコックの映画には色っぽいブロンド美女が出てくるのが鉄則であったが、シャーリーは色気のないショートカットで、ヒッチコック映画には不釣り合いの女優であった。そのせいか「ハリーの災難」は今ではヒッチコック映画の中でも最も異色なブラック・コメディと言われている。こうしてコメディエンヌとしての才能を開花させたシャーリーは、愛嬌はあるけど、ちょっと頭の悪い娼婦役でその地位を確立。アカデミー賞や各地の映画祭を賑わし、女優にして映画長者番付のランキングに入るなど、目覚ましい成功をおさめた。
 今の映画ファンにとっては「愛と追憶の日々」(83)で見られるような「お茶目なおばちゃん」みたいな印象が強いが、そういう人たちにこそ「あなただけ今晩は」(63)を見てもらいたいと僕は願う。たいていの女優は年をとるとダメだが、シャーリーは端(はな)っから別方向の道を歩んできたため、今こうして大女優の名誉を勝ち得ているのだ。
 親日家としても知られ、日本に滞在していたこともあり、先夫のスティーヴ・パーカーも東京在住だった。自分の娘にサチコと命名したり、「青い目の蝶々さん」(62)という日本を舞台にした映画にも出演しているのが笑える。政治活動にも熱心だが、それ以上に心霊とか前世に興味があり、そっち系の著書も出版している。

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