シェリー・ウィンタース (今週のスター)

腐ってもシェリー・ウィンタース
 大女優だと思う。長いキャリアの持ち主で、映画・テレビに数え切れないほど出演。栄光と挫折、結婚と離婚を繰り返し、自伝は2冊発表。それよりも彼女が偉大に思えてならない理由は、これは彼女を紹介するとき触れてはならない事柄でもあるのだが、みるみると太っていったことだ。彼女の若い頃の写真を見てみると、モデルのようだった。痩せ形というわけではなかったが、スレンダーに着こなしていたものである。それが20年後はどうだ。整形手術をしてでも美をたもとうとするのが映画スターの常識であるはずが、シェリーは年々太り、ありのままのオバチャン臭をぷんぷん匂わせたのだった(もしかしたらシェイプアップする努力はしていたのかもしれないが)。なので、アメリカでは年取って太りそうな女性に対し「シェリー・ウィンタースみたいになるぞ」という悪い冗談がある。でも僕はそうまで言われたシェリーが大好きである。痩せているときよりも太ってからのシェリーの方が包容力があって、優しそうで、よっぽどお茶目で可愛いではないか。美の追求よりも性格女優になることを選択した勇気。ハンバーガー大国のアメリカ人らしい選択ではないか。お陰で、デブ役はシェリーに演らせるというのがハリウッドの決まり事になった。幸い、シェリーは体が太ってからも、ころんころんとした容姿に性的魅力があった。
 女優としては「ウィンチェスター銃'73」(50)、「陽のあたる場所」(51)、「狩人の夜」(55)、「ロリータ」(62)の評価が良い。もっぱら優しいお母さん役に才能を発揮し、「アンネの日記」(59)ではユダヤ人である彼女がユダヤ人女優を代表して、アカデミー賞を受賞した。豪華キャスト映画「ポセイドン・アドベンチャー」(72)になると、お腹の脂肪ももう倍にもふくれあがってしまったが、その浮力を生かして素潜りする心優しいおばさん役を力演し、またまたオスカー候補に選ばれた。

オリジナルページを表示する