キャサリン・ヘプバーン (今週のスター)

(1907~2003)

 姉ちゃん時代もおばちゃん時代も名女優

 ハリウッド一の女優は誰かと聞かれたら、この人しかいないね。代表作もいっぱいあるし、間違いないだろうね。あまり女優ぽくないけど、これが本当の女優ってとこかな。日本でもオールタイム女優ベスト・テンとかで必ず1位に選ばれる凄い人だ。よくオードリー・ヘプバーンと間違えられることがあるから、キャサリン・フリークの僕としては、ムッとしてしまうこともある。オードリーは日本人の観客に最も愛された女優で、キャサリンはアメリカの映画関係者に最も愛された女優だ。キャリアでいえばキャサリンがはるかに上で、キャサリンの活動は30年代から始まっており、最近は「めぐり逢い」(94)にも出演した。

 キャサリンは、デビュー当時からかなりの勢いでみるみる人気が上昇していった女優だ。デビューして2年目にして「若草物語」(33)のヒロインをゲット。「若草物語」を映画化した作品は僕が見たのだけでも3種類あるが(他の二つはジューン・アリスン版とウィノナ・ライダー版)、その中ではキャサリン版がベストだといいたい。同年キャサリンは「勝利の朝」(33)にも出演していたが、女優志願の女を演じて、出演作3本目に早くもアカデミー賞を受賞した。ヘプバーンは主演女優賞を取ること4回。2回取った人は何人かいるけど、4回というのは恐れ入る。無論オスカー最多記録だ。

 普段彼女がどういう格好で生活をしていたのかはまったく謎。インタビューは応じないし、カメラシャイだから写真撮影も受け付けない。セレモニーなどには決まって欠席する。彼女はプライベートを明かさない銀幕だけのアイドルだったのだ。

 スペンサー・トレイシーとは公私共によきパートナーとしてタッグを組んだ。ついさっき僕も知ったんだけど、2人は結婚してませんでした。キャサリンはトレイシーの嫁さんとも仲良しだったみたい。僕てっきり結婚してるものと思ってた。だってかなりお似合いだからね。2人は「女性NO.1」(42)から「招かれざる客」(67)までのべ9本の作品で恋人または夫婦役として共演した。

 可愛いキャサリンを見たかったら、やっぱりお薦めは「赤ちゃん教育」(38)、「素晴らしき休日」(38)、「フィラデルフィア物語」(40)かな。この頃は30前後だったのね。ケーリー・グラントとの息のあったお茶目な演技は可愛かったなあ。「赤ちゃん教育」のズッコケぶりは、思わず抱きしめたくなるような愛らしさ。笑い方も何か独特で、何ともいえんチャーミングな姉ちゃんでした。

 おばさんになってからも凄い。演技派として貫禄たっぷり。「アフリカの女王」(51)は僕が思うにヘプバーンのキャリアの最高傑作! ハンフリー・ボガートと2人きりで決死の川下り。面白かった。デビッド・リーンの「旅情」(55)もいい。リーンがカラー撮影の海外ロケ映画に乗り出すきっかけとなる名作で、ヘプバーンならではの中年の女の美しさを見せてくれた。肌の色は濃いし、決して綺麗な人じゃないけど、心に引かれるものがあって、だから仕草とか見ていてもなんだか妙に魅力的なんだよね。どこか強い女という印象も持っている。そういえば昔「男装」(36)という作品で文字通り男装した経験もあったんだったっけ。

 大分歳取ってからの作品になるけど「黄昏」(81)もおすすめ。おばあちゃん女優になって、かなり首が揺れるようになっちゃったけど、泣ける映画だった。ヘンリー・フォンダのおじいちゃんと、いい感じだったなあ。2人ともどうみてもスターの風格がまだ残っていたしね。

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