オーソン・ウェルズ (今週のスター)

世界一のヴォイス・アクター
ラジオ番組「宇宙戦争」でアメリカ中を震撼させ、映画史上のベストワン「市民ケーン」(41)を作った偉大な映画監督なので、いずれ「映画監督」のコーナーでも改めて紹介するとして、このページでは俳優としてのオーソン・ウェルズについて書きたいと思う。
 俳優として一番有名なのは「第三の男」(49)だろう。暗闇の中からオーソン・ウェルズ扮するハリー・ライムの顔が浮かび上がり、ニンマリ笑う。「スイス500年の平和は何を生んだ? 鳩時計だけだよ」の名セリフは彼自身のアドリブだったとか。
 もちろん自分の監督作品の中でも出演している。「市民ケーン」(41)では新聞王ハーストを思わせる実業家を演じているが、怒ったときの演技などは25歳とは思えない貫禄があった。この人は映画監督としてよりもむしろ俳優として語るべき人かもしれない。
 中年太りしたけれど、その太り具合は尋常ではなく、「フォルスタッフ」(66)ではボールのようにでっぷりと太った巨漢を演じて、なんだか憎めなかった。ウェルズはいくつかシェイクスピアの映画を作っているが、これは極めつきだった。
 他の監督作品にも、大物ゲスト的な感じで出てきたものだが、あの厳つい顔だと、短い場面でも観客をオーっとうならせたものである。
 独特の声を持っていたウェルズは声優としての活躍も輝かしいものだったように思う。僕はその点では世界一だったのではないかと思う。実は遺作はアニメの「トランスフォーマー」(85)である。その他、ナレーションを担当した作品もいくつかある。
 日本では「家出のドリッピー」の朗読でも知られている。僕もこれ、ただオーソン・ウェルズに興味があって始めてみたのだけれど、さすがはオーソン先生で、落ち着きのある見事な演技力であった。これで英語が理解できるようになったわけじゃないけれど、ヒアリング能力だけは良くなった。お陰で映画のセリフも聞き取れるようになったので、オーソン先生には映画以外のところでも感謝しているのだ。
 彼の趣味は意外にも手品だったそうだ。大物はやることが違う。そういえば「フェイク」(75)では持ち前の手品を披露してたっけ。

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