愛と青春の旅だち (名作一本)

もてない男が嫉妬した映画
うわー、週刊シネマガ、こんなミーハーに走っちゃって大丈夫なんでしょうか?と言われそうだけど、ハッタリでもこういう映画を紹介しなきゃ幅が利かんよ。おそらく「名作一本」のコーナーで初となる青春映画の登場です。
 僕はこういう「愛と何々の何々」というタイトルがニガテで、見る前から拒否反応があったりする。「愛」がつくと、男性客はまず退く。音楽からしていかにも80年代臭く、80年代と名のつくものがどうも好きになれなかった僕は、この映画がやたらと女の子たちに持てはやされていたことにいらだちを覚えていた。僕がこれを見たのは今から10年前。僕が無知な高校生の頃である。あのころ僕はリチャード・ギアに対してプレイボーイのイメージしか持ってなかったせいもあり、僕のお気に入りだったデブラ・ウィンガーをナンパして1日でベッドインするところになにやら嫉妬心のようなものさえあった。ようするに、モテない男の偏見って奴である。しかし、昨日10年ぶりにこれを見直してみて、改めてこの映画は良くできた映画だと思った。脚本にも無駄がないし、登場人物全員に愛着を覚える。確かにリピートして何度も見たくなる気持ちもわかる。全然笑えない映画なんだけれども、当時はこういうシリアスなラブ・ストーリーの方が女性の心を捉えたのだろう。ひょっとしてこういう映画が今流行の「純愛もの」という形式の走りになるのだろうか。あんな一日でくっつくような恋が純愛なのか? おっと、それも僕の偏見だ・・・。
 僕の姉はこの映画が一番好きらしく、結婚式の日には絶対この主題歌をかけるといっていたが、姉はその夢をちゃんと叶えた。この甘ったるさはMTV的で僕はそれほど好きではないのだが、映画的には確かに成功といえる。ラストの2人のストップモーション映像と音楽のシンクロ率は100%である。この歌がなければこれほど成功はなかったといってもいい。
 僕が最も気に入っているところは、色恋とは無縁のシーンで恐縮だが、士官学校の卒業式、ここに尽きる。さんざん生徒達をしごいてきた鬼軍曹ルイス・ゴセット・Jr.が生徒達に敬礼するが、この黒人が本当にかっこいいおっさんである。面白いのは、この鬼軍曹が、次期新入生をしごいているシーン。リチャード・ギアが横でその様子を見ていて思わず笑ってしまう。新入生と白い立派な服装姿のギアの対比がさわやかな感動を残す。ポイントは、鬼軍曹が最初と全く同じセリフを言っていること。鬼軍曹は新入生に必ず「おまえはゲイか」と言ってしごいていることがわかる。最初と最後のセリフが同じという演出は、しばしばドラマのラストシーンで効果的に使われる手口であるが、こういう演出が観客に安心感を与えるのである。
 悔しいけれど、これは本当の名作です! もう認めるほかありません。
 

1982年製作 アメリカ
監督:テイラー・ハックフォード
出演:リチャード・ギア、デブラ・ウィンガー、ルイス・ゴセット・Jr.

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