リオ・ブラボー (名作一本)

1959年ワーナーブラザーズ映画
製作・脚本:ハワード・ホークス
撮影:ラッセル・ハーラン
音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演:
ジョン・ウェイン、
ディーン・マーチン、
アンジー・ディキンソン、
ウォルター・ブレナン、
リッキー・ネルソン、
ウォード・ボンド、
ジョン・ラッセル

「相手は10人でこっちは4人か。腕がなるな」
 西部劇では何よりも面白いと思う「赤い河」と「リオ・ブラボー」。この両方とも名匠ハワード・ホークスの手作り。「赤い河」は僕にとって世界一好きな西部劇なので、別の機会で紹介するとして、ここでは「リオ・ブラボー」の価値について書きたいと思う。

 そもそも本作のきっかけはジンネマンの「真昼の決闘」にある。「真昼の決闘」では主人公が悪人と戦うために街のみんなに泣きつき、クライマックスでは女に助けられる。「真昼の決闘」が傑作であることに変わりはないが、ホークスに言わせれば「あれのどこがいいのかね。俺が本当にかっこいい西部劇を作ってみせよう」とのことだ。
  その反発からできた作品が「リオ・ブラボー」だった。理屈抜きに楽しめるように作られた豪快な西部劇で、これはフォードの「駅馬車」と共に最も有名な西部劇となった。ヒューマンドラマ色の強い「駅馬車」は舞台が宇宙に移ろうとも面白いかもしれないが、「リオ・ブラボー」は西部劇だからこそ良いのであって、フォードでいう「西部劇をもって人生を描く」というのではなく、「西部劇の醍醐味を楽しむための西部劇」という姿勢が本作には貫かれているように思える。

 まず正義役が皆良い。見どころをひとつだけあげるとするとそこだろう。ジョン・ウェインの動きは真似したくなるほど面白い。あのかったるそうな歩き方と、壁に寄りかかるときのしぐさ。服装はカラフルなのに、どうしてか威厳たっぷり。拳銃ではなくてライフルで戦うところも渋い。たまにニコニコする時があるが、あの表情はウェインにしか出せまい。
 アンジー・ディキンソンもうまい。いかにも西部劇らしい洒落た台詞をはいてくれる。彼女のお色気で締めるラストも心地よい。他にも足の不自由な老人ウォルター・ブレナンや二丁拳銃の若者リッキー・ネルソンなど、キャスティングの凸凹ぶりが心憎い。一番見てもらいたいのは彼らが一緒に「ライフルと愛馬」を歌うシーン。ディーン・マーチンが自慢の喉を聞かせ、コメディ路線からの脱皮を試みる。この曲は何度聞いても嬉しくなる名曲中の名曲だ。

 もともとはアクション映画とコメディ映画に手腕を発揮してきたホークスが「赤い河」を撮ったことも特筆に値するが、それ以上に「リオ・ブラボー」がどこから見ても西部劇らしいことが興味深い。2時間半という上映時間にして、ストーリーはとてもシンプルであり、ただそこに西部劇らしい活気を付けただけというある意味大胆な構成。
 「リオ・ブラボー」はアクション映画でもコメディ映画でもなく、それは紛れもない西部劇だ。ひたすら西部劇らしさを出そうとするこの姿勢は、つまり自分の理想のヒーロー像がそのまま形になっているということ。これがホークスの自己満足に終わらないのが彼の才能を尊敬するゆえんである。これはもう気持ちの良い傑作だ。

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