赤い風車 (名作一本)

1952年米=英映画

 有名な画家トゥールーズ・ロートレック(1864-1901)の生涯を軸に、19世紀末期のパリがどのような街だったのかをスクリーンに再現しようと試みたジョン・ヒューストンの意欲作が「赤い風車」です。
 僕が一番見てもらいたいのは、なんといっても序幕の躍動感あふれるフレンチ・カンカンの映像です。ロートレックの広告画そのままのダンサーたち(可愛いおばちゃんたちです)が登場し、テクニカラーの鮮やかな色彩が、当時の迫力をそのまま映し出しています。カット割りは、意外と少ないです。また、ロングショットやクロースショットなど、カット同士のアクションの流れを統一させているので、カットのつなぎ目を意識させません。これが本当のダイナミック・カッティングです。
 最初にあれだけ華やかに見せた後、ロートレックが実は身障者だということが静かに映し出されますが、このワンカットは衝撃的です。それから後はロートレックの哀れな日々が湿っぽい映像で残酷に描かれていきます。結末は非常に悲劇的なのですが、ヒューストンはあえてその結末を華やかに描いて見せます。華やかであることが、よけいに悲しさを募らせます。

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