自然の驚異 (名作一本)

1950年代前半
製作:ウォルト・ディズニー
 

今は亡き大自然の記録映画
 ウォルト・ディズニーは30年代から40年代にかけては「ミッキーマウス」や「シリーシンフォニー」などの短編アニメ、音楽アニメに定評がありましたが、50年代で最も人気があったのは、この実写ドキュメンタリーシリーズ「自然の驚異」でしょう。
 このシリーズは、自然界の動物や植物にスポットをあてて、その生態を克明に描き出した子供向けの教育映画でした。不思議な水鳥の生態を記録した「水鳥の生態」や、砂漠の弱肉強食の世界を描き出した「砂漠は生きている」など、傑作といえる作品もありました。

 製作された時代を考えてください。50年代といえば、まだテレビも普及していませんし、映画もモノクロが主流でした。そんな時代に、フルカラーで見せた大自然の映像なんですから、当時の観客たちが驚かないはずがないです。何を見ても新鮮な感動があったのではないかと思います。10年前に日本で「わくわく動物ランド」というクイズ番組がありましたが、あの番組もこの「自然の驚異」を元にしていたのではないでしょうか。
 「自然の驚異」は自然の姿をときにはおもしろおかしく、ときには恐ろしく描いてみせます。その世界を言葉巧みに表現するナレーターがまた面白いんです。かたっくるしいことは抜きにして、映像にストーリーを持たせて解説しているので、カートゥーンっぽい親しみやすさがあります。BGMのオーケストラも、動物たちの動きに合わせて奏でられて、おかしさたっぷりです。

 現在も「ミクロコスモス」など、この手のドキュメンタリーがごくたまに作られますが、ほとんど見られなくなりました。やはりこの手の作品は今となってはテレビ業界の方が優勢ですからね。今時映画館でこういうのを見せられても、たいしてピンと来ないでしょう。

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