スイスファミリーロビンソン (名作一本)

1960年アメリカ映画/ケン・アナキン監督

 有名な小説の映画化です(公開時タイトルは「南海漂流」)。「ファミリー映画」というカテゴリーで僕が一番にお薦めする作品です。さすがウォルト・ディズニー製作とあって、陽気で楽しい映画に仕上がっています。

 この映画は一家族の漂流生活をほのぼのとしたタッチで描いたものです。大人にとっても子供にとっても、きっと満足のいく作品だと思います。それだけ根底がしっかりした内容なんです。

 登場人物の家族構成から面白いです。父がいて、母がいて、年齢の離れた3人の兄弟がいます。3人とも男の子というのがポイントです。長男はリーダー気取り、次男は秀才気取り、三男はワンパク坊主です。誰が主人公とは言いません。「家族」そのものがこの映画の主役であって、ワンシーンワンシーン、そえぞれ視点となる人物が違います。ときには親の視点になり、ときには子の視点になります。

 とにかくこの幸せそうな雰囲気を満喫してください。無人島に漂着しても、家族たちはすごく前向きで、ちっとも不安な顔を見せません。間もなく、壊れた船に積んであったものを集めて、島に木造の家を建てるのですが、この家がとても素敵な家でして、ベッドから食器から楽器から本から全てが満たされています。音楽に合わせて踊ったり、島の動物と遊んだり、運動会をしたり、一家団らんで楽しそうで、とてもうらやましいかぎりです。家庭の素晴らしさがそこにあります。子の成長を見守る母の表情など、とても感慨深いです。

 やがて、島に一人の女の子がやってきます。長男と次男はひとりの女の子をとりあって兄弟げんかします。つまり、この映画では子供の思春期が三角関係で描かれているわけです。子供の恋愛なので、とても無邪気で微笑ましいものです。世界名作劇場にも通じるものがあるかもしれません。大人のドラマばかり見ている人には、これはとても新鮮かもしれません。

 もちろんハラハラドキドキの場面もあります。クライマックスでは海賊たちと合戦をします。ファミリー映画なので、流血はありません。家族たちはココナッツの花火弾を海賊たちに投げつけて戦います。ここは決まり切った展開かもしれませんが、言い換えればれば、期待通りということなので、気持ちがいいのです。

 「ファミリー映画」と「子供映画」は別ものです。ファミリー映画は親になってこそ心に響くものがあるのです。どうぞ、ご家族そろってご覧ください。

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