アルゴ探検隊の大冒険 (名作一本)

<1963年/イギリス映画>
製作:チャールズ・H・シニアー、レイ・ハリーハウゼン
監督:ドン・チャフィー
脚本:ジョン・リード、ベバリー・クロス
撮影:ウィルキー・クーパー
音楽:バーナード・ハーマン
出演:トッド・アームストロング、ナンシー・コバック
トリック映画好きにとってはバイブル
 僕がトリック映画の大ファンだということは、読者の方のほとんどの人がお気づきだと思う。そんな僕が大教典として崇めている映画が、「シンドバッド7回目の航海」と「アルゴ探検隊の大冒険」である。ともに製作者はチャールズ・H・シニアーで、トリック撮影はレイ・ハリーハウゼンが手掛けている。この2本は、ファンタジーの世界、トリックの世界、テレビゲームの世界、ロマンとスペクタクルの世界に憧れている人にとっては、まさしくマストな作品であるといえる。今回は「アルゴ探検隊の大冒険」について語り明かそうではないか。

ダイナメーション方式
 ダイナメーション方式とは、ミニチュアのストップモーション・アニメの映像と、役者が演技している実写の映像をうまく組み合わせる方式のことで、ハリーハウゼンが考案したものである。ダイナメーションでは、たとえば青銅の巨人が船乗りたちを襲いかかったり、首が何本もある大蛇が主人公の行く手を阻んだり、そういった奇想天外な映像を、ダイナミックに演出することができる。この技術は、「スター・ウォーズ」を含めて、今までに何百という作品で活用され、トリック映画の基礎として親しまれていたのだが、やがてCGにその座を奪われ、衰退の道を辿ることとなった。
 ダイナメーション方式がもっともわかりやすい形で使われた映画として、この「アルゴ探検隊の大冒険」をここに紹介する。なんといってもこのトリック映像が凄い。裏を暴けば、実を言うと、ダイナメーションの映像以外にこの映画には特にこれといって面白いところがない。最近氾濫しているCG映画はストーリーも非常によくできているが、「アルゴ探検隊の大冒険」のストーリーは比較にならないほど稚拙で面白味に欠ける。無論出演者も皆無名俳優ばかり。同作はいわば純粋なトリック映画であり、ダイナメーションを延々と披露して終わる見せ物映画なのである。今の時代では、チャチで退屈な一本と評価されてしまうのが落ちだろう。
 しかしここは鑑賞者の方々も、時代背景を考慮して、子供心に戻って、ただ純粋に、トリックだけを楽しんでもらいたいのである。骸骨が動いた、それだけでも大きな感動がある。いかにも「作り物」的なカラクリ感たっぷりのモーションを見せる骸骨は、僕のようなSFマニアにはたまらない感動がある。さすがに内容が内容なので、トリックだけはしっかりとしていて巧い。この動きと、この重量感は、CG映像の氾濫する今、あなたにとっても強い刺激となること間違いなしである。

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