少林寺木人拳 (名作一本)

(1977年/香港/ジャッキー・チェン主演)

ジャッキー・チェンは僕らの幼少の思い出だ
 僕のお姉ちゃんは大のジャッキー・チェン・ファンだ。お姉ちゃんが一番好きというジャッキー映画がこれ。僕もこれは小学のときに見たが、木の人形と闘うところや、饅頭の皮をむいて大男に食べさせるところや、肩甲骨がムキーっとなるところが、妙に脳裏に焼き付いて、長らく忘れられなかった作品である。何しろ当時はビデオデッキなんぞを持っていたら上流階級と勘違いされてしまうような時代だったので、ビデオを見ることは不可能だった。でも僕はこの映画をもう一度見たくて見たくてたまらなかった。そして数年前、ようやくWOWOWでジャッキー・チェン特集があり、僕はこの思い出の映画に再会することができた。

この大袈裟さなノリが麻薬
 今見てみると、実に作りが下手クソな映画だったのだとわかるが、特撮ヒーローもののノリはなぜか今見ても面白い。漫画みたいに大袈裟なアクションをクソ真面目に撮っているものだから、ローテクでもなんか愛着がわいてくる。だいたい木人形が人間みたいに動くところから不思議だが、これが弱っちそうなのに、無敵の力を誇るところがまた泣ける。
 あのカンフーしているときの大袈裟な”ブッ”という空を斬り裂く音。あきらかにコマ落としで撮影しているとバレるアクション。攻撃が当たったときに派手に舞い上がる砂ぼこり。「おいマジかよ」といいたくなる大回転ジャンプ。シャンカシャンカと始終流れつづけるけたたましい中国楽器。何やらはじけた感動を与える(「マトリックス」でまさかこのノリが復活するとは、夢にも思わなかった)。
 ストーリーも滅茶苦茶大袈裟で唐突。トントントーンと無責任にストーリーを進めていくご都合主義のやり方はかえって豪快に思えて興味深い。また台詞もとことんクサイ。鉄の足袋をはかせるときに師匠が「これを履いて身を鍛えるのじゃ。そうすれば水の上を歩けるようになるのじゃ」と言うところなど、噴き出してしまった。
 ハリウッド映画を意識した、この徹底した娯楽づくりは、さすが香港映画。テレビゲームや「キン肉マン」などの漫画にもパロディで登場してしまうほど、香港映画の中毒性はでかい。つくづく香港映画は麻薬だと思わせる。
(第49号 「名作一本」掲載)

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