ホーリー・マウンテン (名作一本)

<1973年/アメリカ・メキシコ/116分>
製作:アラン・クライン
監督・脚本・音楽・出演:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影:ラファエル・コルキディ



食欲がなくなるオタク映画
 「エル・トポ」を作ったアレハンドロ・ホドロフスキーは、最初のカルト映画監督だと言われている。ジョン・レノンも彼を気に入っており、ホドロフスキー映画の独占配給権を獲得したというのだ。「エル・トポ」はとにかく悪趣味な映画だったが、「ホーリー・マウンテン」はさらにそこに磨きがかかり、悪のりしすぎたとんでもない映画に仕上がっている。食欲がなくなること請け合いの映画だが、意味不明の展開はとにかく斬新で、所々だけ見ても面白い。

イマジネーションめきめき
 この映画はオープニングからとにかく色んなものがうじゃうじゃ登場する。蠅の大群、裸の子供たちの大群、デブの大群、娼婦の大群、カエルの大群、「なんじゃこれは」と叫びたくなる映像ばかり。前半はセリフが全くなく、主人公はギャーギャー悲鳴をあげるだけ。
 主人公は自分と同じ姿形の人形1000体に囲まれたりもするが、悲鳴あげても仕方がないから、その人形を食べることにする。その後、何やら高い塔に潜入し、超能力を持つ錬金術師の弟子になり、自分のウンチを黄金に変える妖術を修得する。この修行のシーンがまたユニークで、色々の部屋でおかしな洗礼を受けていく様子が沢山の刺激的映像で構成されていて、見応えがある。1シーン1シーンの奇抜なアイデアは、まったくよく思いついたものである

とにかく下品な内容
 最初からそうだが、この映画はとにかく下品である。とことん下品に盛り上がる。しかしそこがまたたまらない。不死の肉体を得るために、錬金術師は8人の弟子たちを集めるが、弟子たちは水星やら金星やら、惑星を守護神としている。彼らのプロフィールはオムニバス形式でそれぞれがひとつのドラマとして楽しめるのだが、これがまたどれも下品で、ひんしゅくを買いそうなとんでもない内容ばかり。巨大な性器のオモチャや、金玉を1000個集めた男などが大袈裟に登場する。
 同作は、映像的な感性や、ストーリー的な面白さを楽しむというより、瞬間瞬間の発想力に衝撃を受ける映画である。何より一番衝撃的なのはラストシーンである。今までのストーリーが単なるオバカ騒ぎだったと思わせる、余りにも意外すぎる珍展開である。これにはどういう表情をしていいのやら、迷うところだ。
(第44号 「名作一本」掲載)

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