掠奪された七人の花嫁 (名作一本)

<1954年/アメリカ/102分>
監督:スタンリー・ドーネン   シネマスコープの画面いっぱいに踊ろう
 サミュエル・ゴールドウィンはこういっている。
 「横長の画面は、つまらない映画を倍つまらなくする」
 これはすなわちシネマスコープを批判した言葉である。当時のシネマスコープといえば、スクリーンが巨大なことだけが売りで、映画的な演出は二の次。だからシネスコはまだるっこくて疲れるだけ、という印象が少なからずあった。
 それなら、シネスコの画面を生かした映画を撮ろうじゃないか、と立ち上がったのがミュージカル映画の名手スタンリー・ドーネンである。ドーネンは舞台のステージを見習って、シネスコサイズいっぱいに出演者たちをダイナミックに踊らせ、なおかつ登場人物に舞台には出せない映画的なカメラの魅力を引き出し、うまくカットを繋げた。とにかく活気に満ちあふれた演出で、その功績で同作はシネスコの本当の威力を見せつける傑作となった。


MGMミュージカルは大いに笑顔で楽しもう
 踊りがスゴイのはドーネンらしく、当然だが、ストーリーもまたいい。舞台でも小説でもない映画だけのオリジナル・ストーリーだが、どことなくおとぎ話風の内容。村の七人兄弟が町におりてきて可愛い娘たちを掠奪して嫁さんにしてしまう話だが、14人の登場人物たちの生活ぶりがコミカルで、しだいに娘たちが男たちに引かれていくあたり、牧歌的な温かさがあって、思わず笑みがこぼれる。見終わった後もゴキゲン気分がおさまらないハリウッド黄金時代らしい一本だね。
(第42号 「名作一本」掲載)

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