天空の城ラピュタ (名作一本)

<1986年/日本>
製作:徳間康快/制作:高畑勲
監督・脚本:宮崎駿/音楽:久石譲
出演:田中真弓、横沢啓子、寺田農、永井一郎

 
  3.海賊たちの人物設定もコミカルで面白い。無茶苦茶な性格だけど根は優しいママと、力はあるが頭が弱い子供たち。みんなとてもハートが温かく、多いに楽しませてくれる。
 主人公の2人、海賊、軍隊、悪役。大きく分けて4タイプのグループが絡み合っていく構成は、とてもよくできており、実写ドラマよりも面白い。

4.宮崎駿の恋愛描写には何かしら必ず微笑ましさがある。ちょっと照れくさいけど、これが少しも嫌味になっていない。愛の言葉は使わないけど、それらしいことをほのめかすような演出で、決してキスをしないのに、二人の愛は強く結ばれている様子がわかる。二人の愛を見守る海賊のおばさんがまた良かった。

5.蠅のような空飛ぶ乗り物にのって海賊たちがシータを救出しに行くシーンは、劇中圧巻である。強烈な爆走音をたてながら突進していく様子は、スリルとスピード感たっぷり。大砲も効かない無敵のロボットが大暴れして、豪快なアクションが展開される。宮崎駿はまさしく痛快冒険SF大作をアニメの世界で再現させている。

6.天空の城にきてからは、僕はこれからどうなるのだろうと思った。どこにも掴まるものがないところでパズーが宙ぶらりんになって今にも落っこちそうになる場面は、今見ても衝撃的だ。パズーには逃げ場がなく、死を覚悟しながらも、ひたすら愛のためだけに前に進み続ける。この行き詰まった様子は、ラピュタの大袈裟なまでの破壊力が強調させる。ただただそのSFの世界観に圧倒させられる。

1.見れば見るほど宮崎駿が天才に思えてくる。この映画を見ていつも感心させられるのは、展開が決して弛緩することなく、最初から最後まで興味がさめないことである。全てのシーンが真新しく、危険と好奇心がいっぱいで、他の映画にはない興奮を味わわせてくれる。宮崎駿の世界観の空想力の大胆さ・派手さ・壮大さにはただただ度肝を抜かれる。彼の発想はSFの醍醐味である。

2.谷底にある村のデザインが素晴らしい。列車も通っているが、古めかしい線路が地上よりもうんと高い所に敷かれている。こういう造形力は、SF映画らしい雰囲気を盛り上げる。どことなくノスタルジックでもある。
(第38号 「名作一本」掲載)

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