タワーリング・インフェルノ (名作一本)

The Towering Inferno

<アメリカ/1974年/アクション>
製作:アーウィン・アレン/監督:ジョン・ギラーミン/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:スティーブ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、
フェイ・ダナウェイ、リチャード・チェンバレン、フレッド・アステア、
ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン、ロバート・ボーン、ロバート・ワグナー

パニックの天才アーウィン・アレン
 「タワーリング・インフェルノ」を作りあげたボス、アーウィン・アレンは偉い。今ではアレンはパニック映画の父といわれているが、それもそのはず、「ポセイドン・アドベンチャー」も彼の作品なのである。前回の水の恐怖の次は、火の恐怖。スケールを拡大し、莫大な費用を使って豪華なる特撮映画へと仕上げるその手腕は大した物である。

この上ない豪華キャスト
 アーウィン・アレンはまた凄い俳優陣を揃えてきたものである。かつてなかった豪華さで、後にもこのような贅沢なキャスティングは実現していない。スティーブ・マックィーンとポール・ニューマンが共演していることから凄いが、アメリカ俳優界の重鎮ウィリアム・ホールデン、70年代の美人スター・フェイ・ダナウェイ、大御所といえるフレッド・アステアとジェニファー・ジョーンズらも出ており、まさに豪華キャストである。彼らスターたちがそれぞれ主人公となり、個々のドラマを展開していく手法は、グランド・ホテル形式である。パニック映画としても面白いのに、更にこの顔ぶれなら、映画ファンならよだれが出てしまうよね。

下から上への次は上から下へ
 「ポセイドン・アドベンチャー」では人間の優しさについて描いたが、「タワーリング・インフェルノ」では人間の醜い一面にも焦点を当て、ますますドラマ性が増している。
 テンポについては非常に流れが良く、爆発音を一種の句読点として、次々とスペクタクルを見せていくところがなかなかの妙で、最初のパーティのシーンはとても穏やかなのに、気が付けば取り返しのつかないくらいひどい惨事状態の場面へと発展していく流れはまさしく絶品。
 「ポセイドン・アドベンチャー」では主人公たちが固まって下から上へ上へと逃げようとするのだが、「タワーリング・インフェルノ」ではそれとは逆に、上から下へ下へと逃げようとする。それも登場人物はみなバラバラである。もちろん途中階段が爆発したり、火が行く手を遮ったりして、再び上へ行かなければならないこともあり、複雑なるシナリオの運び具合がまた面白い。
 正統派の「ポセイドン・アドベンチャー」、ボリューム派の「タワーリング・インフェルノ」。どちらを選ぶかは個人の好みである。

人物の置かれている立場がユニーク
 安全な場所が目の前に見えているのに、そこまでどうしても辿り着くことができないというところは、皮肉が効いており、地獄と化した燃えさかるビルの後ろに美しい夜景を見せるあたりも、「この建物だけが惨事」という残酷さが表れていて興味深い。広い背景を見せつつも、閉ざされた立場にいる主人公たちのこのギャップが、見事なスパイスとなって、緊張感を盛り上げるのである。

個人的なことだが、僕はこの映画の主題歌が映画主題歌としては一番好きである。モーリン・マクガバンが歌う『愛のテーマ』である。「ポセイドン・アドベンチャー」の『モーニング・アフター』(歌唱はやはりモーリン・マクガバン)に続いて再びアカデミー主題歌賞を受賞した感動のヒット曲だ。きっとみんなも気に入ってくれると思う。
(第34号 「名作一本」掲載)

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