蒸気船ウィリー (名作一本)

Steamboat Willie

★★★★★

<アメリカ/1928年>
製作:ウォルト・ディズニー


(C)Walt Disney

●ミッキーマウスの誕生
 1928年、カートゥーン映画「蒸気船ウィリー」発表、記念すべきキャラクターが誕生する。ミッキーマウスである。ウォルト・ディズニーが、チャールズ・チャップリンをモデルにして創造した。もともとディズニーはチャップリンの物真似が得意で、チャップリンの動きや表情は脳裏に焼き付いていたので、巧い具合にネズミのイメージに転化することができた。

●ディズニー映画といえば音楽
 ちょうどこの時期、映画が無声映画から発声映画に移行する最中であったので、最初はサイレント映画として撮影していたが、急遽トーキーに変更。ディズニー自身がミッキーを吹き替えて、ユニークなアイデアに満ちたリズミカルな音楽ショーを展開させた。この時期からすでにディズニーの「音楽の進撃」が始まっていたのだ。

●おいおいちょっと残酷でないかい
 動物たちを楽器にしてしまうという奇抜なアイデアがこの映画の見所であるが、動物の扱い方が、笑えるほど乱暴だということに注目したい。チャップリンのスラップスティックなギャグは、ちょっとブラックな印象が強いが、ミッキーはそんなチャップリンの性格を受け継いでいるようだ。動物のしっぽをミッキーが力一杯引っ張ると、その動物が悲鳴でガァと音を出す。その音でメロディを作っていく・・・。愛らしいから少しも可哀相に見えないけど、今のディズニー映画のハイセンスさに比べると、こちらは至って野性的かつストレートで、多少残酷な感じがするのが興味深い。
 ミニーもこの映画から登場するが、ミッキーが彼女のスカートをめくって、パンツを引っ張る場面などもある。画的に見るとおかしくてたまらないのだが、文章だけで説明すると、何だか恥ずかしくなってしまう。

●研究材料としても貴重
 ミッキーは年代がたつにつれ、しだいに姿を変えていったが、これを見ると、昔のミッキーは格好が凄くシンプルで、性格も悩みのない気ままなネズミだったんだなぁって、ちょっと嬉しくなる。白黒なのが時代を感じさせるが、この映画を見て、当時のディズニーの姿勢を知ることができるだろう。貴重な研究材料である。

(第19号 「名作一本」掲載)

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