裸の島 (名作一本)

★★★1/2

<日本/1960年/96分/人間ドラマ>
製作・監督・脚本:新藤兼人/撮影:黒田清己
音楽:林光/出演:殿山奉司、乙羽信子

●ちょっと違う日本映画
 「裸の島」はいうなれば、実験映画である。モスクワ映画祭ではグランプリを受賞し、日本映画の新しい可能性を見いだした作品だ。
 何が違うのかというと、ひとつは製作形態である。製作費は500万円であったが、スタッフは総数たったの13人、主な出演者も4人だけ。スタッフたちはロケ地付近で合宿生活し、さながら集団キャンプのような感じで映画を着々と作っていったのである。なお、スタッフたちには3ヶ月分の生活費が支払われた。

●映像で見せるサイレント映画
 この映画はサイレント映画である。とはいっても、音はちゃんと入っている。ただ、実は登場人物が一言も喋らないのである。つまり純粋に映像の表現で人々を感動させるわけだが、その映像がまた丹念で、素晴らしい。小島に住む夫婦の物語だが、畑を耕そうにも、水がないので、隣の島までわざわざ小舟を漕いで水を取りに行き、更にそれをかついで山を登り、ようやく畑に水をまく。その気の遠くなるような苦労を、ゆっくりと映像によって捉えていく。

●音楽も道具になる
 登場人物が喋らない分、音楽が重要になってくるが、この音楽も見事である。映像にマッチする長閑な曲なのだが、息子の葬式のシーンでも、明る目の曲を使っており、それが余計に悲しさを増す。

●実験的すぎるのも・・・
 登場人物が喋らないのというのは、面白いかもしれないが、ただこれがわざとらしく、妙に不自然な印象がするのがちょっと気がかりかな。やはり、変わり種映画なので、普通の映画と比較するのはナンセンスだろう。

(第17号 「名作一本」掲載)

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