ブレードランナー (名作一本)

Blade Runner

【R指定】
<アメリカ/1982年/SF>
製作:マイケル・ディリー/監督:リドリー・スコット
原作:フィリップ・K・ディック/美術:シド・ミード/音楽:ヴァンゲリス
出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、ダリル・ハンナ

作風のネタをあかしています。



●公開当時は無視されたが、ビデオ化されて大ヒット
 「ブレードランナー」はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を映画化したものである。原作小説が発表されて10年以上も後の話である。もうディックは他界していた。
 本作は、公開当時、大して話題にはならなかった。内容が浅すぎて、面白みがなく、ごく一部の批評家が絶賛していたものの、世間的にはほとんど無視されていたようだ。主演のハリソン・フォードも、明るいイメージが売りだったのに、今回はいたって暗い役柄で、あまり評判がよくなかった。
 ところが、ずいぶんと後になって、ビデオが普及し、ビデオセールスで爆発的大ヒットを記録した。ハリソン・フォードの熱烈なファンが興味で借りたという理由もあったかもしれないが、このブランクは何を意味するのだろうか?

●美術面が評判となりカルトと化す
 事実、この映画の内容は薄い。しかしこの映画には映画ファンを引きつける魅力があるのだ。それは美術面である。未来社会をこうもディテールまで凝って、ムードたっぷりに表現した映画は「ブレードランナー」が初めてのことだろうし、世界的に有名な特撮作家のダグラス・トランブルが描き出す火星の建造物の印象の強烈さは、他のSFにはない味わい深さである。ヴァンゲリスのシンセサイザーのメロディも奇抜で、脳裏に焼き付くものだし、単純と言われたストーリーにも、どことなく哲学的な情緒感を感じさせる。
 あくまでイメージを重視させたことが、後の成功をつかむことになったのだ。見れば見るほど新しい発見があると口コミで広がり、この映画はいつしかカルトと化してしまった。後に監督のリドリー・スコット自身が再編集したものなども発売され、”ディレクターズ・カット”ブームの先駆けともなった。

●人造人間/独創性
 この映画のテーマは人造人間、すなわち”レプリカント”である。
 主人公デッカード特捜官は、叛乱を起こした4人のレプリカントを抹殺するため、派遣される。この粗筋だけを聞くと、なんだかゾクゾクさせられるものがある。
 このレプリカントは感情を持ち、人間とほとんど見分けがつかない。この”感情を持つ”というところがディックの仕掛けた新しいSFの発想だと思える。ショーン・ヤング演じる美人レプリカントは、自分が人造人間であることを知らず、疑似記憶まで埋め込まれている。デッカードは、彼女をレプリカントと知りつつも、恋に落ちてしまう。ルトガー・ハウアー演じる巨漢レプリカントは、自分が製造されたということに疑問を抱く、どこか悲しさを持つ殺人鬼である。レプリカントには寿命が4年しかない。こういった想像を絶するイマジネーションが、この映画の魅力なのだろう。
(第15号 「名作一本」掲載)

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