ハムレット (名作一本)

Hamlet

<イギリス/1948年/158分/文芸>
製作・監督・出演:ローレンス・オリビエ

●シェイクスピア映画の第一番!
 説得力のない陳腐な言い方かもしれないが、この作品こそ、全シェイクスピア映画の中の最高傑作であることは、ほんとに間違いない。頼むから信じてくれ。アカデミー賞とベネチアの両方を受賞している唯一の作品だし、アカデミー賞だって外国映画としては初の受賞だったんだ。
 シェイクスピア当人にとっても、この劇は長年彼の最高傑作と言われ、数多くのシェイクスピア役者がハムレットを演じることを憧れとしてきた。
 ローレンス・オリビエは当時イギリスのスターであり、最も有名なシェイクスピア役者であったが、彼はそのみんなの夢を最初に実現させたイギリス人である。彼はこうして俳優として初めて”ナイト”の称号を受けたのだった。

●観察するだけで面白いストーリー
 シェイクスピアの劇はどれも展開が巧みで、面白いが、「ハムレット」は悲劇でありながらも、喜劇としての面白さもあり、登場人物の行動を観察していても、シチュエーションの転換など、実に高等で、ときには笑い、ときには悲しみ、ときには緊張し、飽きさせないダイナミックな波で進行するストーリー・ワークの神髄を知ることができる。

●美術面と映画技法の功績
 シェイクスピアの映画は主に2通りある。劇をそのまま撮影したような作品と、映画だけの編集技法を駆使した作品。前者は少数派であるが、後者は難しい。
 でもオリビエはその難しい作品をよく作ってくれた。セットも舞台を明らかに無視した作りで、三次元の奥行きを感じさせるリアルな装置を使っている。衣裳もとても素晴らしく、数ある「ハムレット」映画の中でも決定的といえ、ハムレットのイメージをこれと定着させたほどだ。
 オリビエはハムレットの心境をより面白く表現するため、クロースアップやロングショットを使い分け、映画だけのカッティングの妙を見せつける。オリビエこそ、演劇を映画へと昇華させた偉人なのだ。

●演技者としての英国スターたち
 オリビエの演技は素晴らしい。彼はアカデミー賞ノミネート回数最多記録保持者であるが、やはりシェイクスピアを演じさせて強い。かなりシアトリカルな演技ではあるが(つまり大袈裟)、作品をよりドラマチックにするパワーがある。本作では亡霊の役も自分で演じているが、この若さでこの貫禄は何なんだ!?
 大スター・ジーン・シモンズの美しさと、それに反比例する狂いっぷりもたまらない。
(第11号 「名作一本」掲載)

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