スター・ウォーズ (名作一本)

Star Wars

<1977年/アメリカ/SF>
製作:ゲーリー・カーツ
監督・脚本:ジョージ・ルーカス
撮影:ギルバート・テイラー/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリソン・フォード
アレック・ギネス、ピーター・カッシング

 この映画は僕にとって思い入れが深く、特別なので、今回はちょっといつもと趣向を変えて、個人的な意見を中心にして、この映画を紐解いていこう。

●1977年発表。大ヒットを記録し、SFブーム到来
 77年まで、はっきりいってSFは屁みたいな扱いしか受けていなかった。一部を例外として、SFはB級か、そうでないとしても子供向けであり、とても観客を集められるメディアではなかったのである。
 ところが異変が起こる。77年にこの「スター・ウォーズ」が公開され、これが歴代ナンバー1の大ヒットを記録したのである。広大なストーリー、驚異的特撮技術、老若男女楽しめる娯楽性、この三拍子がそろったスペース・オペラ「スター・ウォーズ」は、アカデミー賞の候補にもなり、熱烈なファンを多く生み出した。SF映画ブームの到来である。

 この映画が産声をあげた年、僕も生まれた。だからもちろん0歳の僕は、この映画を劇場で見ることはできなかった。でも、中学の頃にテレビで見て感激し、ビデオに録ってテープがちぎれるほど何遍も見まくった。
 出だしの「昔々、銀河系のはるか彼方で」から、ジャーンという音楽と共に字幕が出てきて、巨大な宇宙船が姿を現すあの迫力と感動・・・。レーザー光線の効果音、ライトセーバーがスパークする映像、2つの太陽が照らす夕陽。全てが興奮だった。
 当時ゲームデザイナーを目指していた僕は、「スター・ウォーズ」ゲームブックなるものを作ったりして楽しんでいた。6年前まで映画に全く興味がなかったこの僕が、子供の頃に唯一熱中した映画だったのだ。
 だから「スター・ウォーズ」は自分にとっては最も思い入れの深い映画のひとつなのである。僕の友達の中には、この映画をまだ見てないという奴もいるが、人間的にそいつが信じられなかった。最高の娯楽映画なのに!

●キャラクターがかっこいい!
 僕はこの映画の全てに惚れ込んだ。特に登場人物の格好良さは言葉に表せない。ルーク・スカイウォーカーには本気で憧れた。衣装も奇抜で、「スター・トレック」の未来的な衣装とは対照的に古風なデザインであり、そこが未だに古さを感じさせない。
 ルークやオビ・ワンはもろに和風。黒澤映画のようなシーンも多数見られ、特にライトセーバーはチャンバラを想像させる。さすがにオビ・ワンが柔道の”帯”、ジェダイが時代劇の”時代”から来ているだけあって、ジョージ・ルーカスの日本狂ぶりが出ている。かと思うと、ハン・ソロは西部劇の無法ガンマンみたいな格好で、歩き方も性格もそれっぽい渋さで、とにかく嬉しいキャラ設定である。
 人間だけでなく、巨大な大猿が出てきたり、何でもできる万能ロボットも2体出てきて凸凹コンビみたいなコントもやってくれる。この他、サンドピープルというユニークな山賊や、中世の魔法使いのような鍛冶屋も現れ、酒場のシーンでは不気味なクリーチャーがゴキブリのようにでてきて、ミュージカル的エッセンスで盛り上がる。どのキャラクターも面白い声を発して、これがまた実にアイデア新鮮。うーむ、R2-D2はあったようでなかったロボット。そして強敵ダース・ベーダーの荒い息の威容。
 この映画にはまさにSFのあらゆる古典ロマンが凝縮しているのである。

●大胆にも無名役者を主演に置いて撮影
 主演の3人マーク・ハミル(撮影当時25歳)、ハリソン・フォード(撮影当時34歳)、キャリー・フィッシャー(撮影当時20歳。レーア姫崇拝者の数は数えきれない)はほとんどまったくの無名で、これが本格的初出演であった。内容ではなくスターを見に行く観客の方が多い映画ビジネスにおいて、無名役者だけしか起用していないこの映画は、堂々の大ヒット。それだけこの映画の内容には娯楽性があったわけである。しかし、その後成功した役者が、ハリソン・フォードだけというのは残念な話である。
 なお、オビ・ワン役のアレック・ギネスは、イギリスで一・二を争うほどの名優で、この映画ではアカデミー助演男優賞の候補になっている。また、総督を演じていたピーター・カッシングはホラー映画の人気スターであった。2人を除けば、他に有名人はいない。
 ちなみに、ダースベーダーの声ジェームズ・アール・ジョーンズは「ライオンキング」のお父さんライオンの声である。

●何と言っても音楽ですよ。
 音楽はジョン・ウィリアムズ。一度聴いたら脳裏に焼き付く壮大なるオーケストラ。このテーマ曲は今でも聴けば興奮する。鳥肌がたつ。これぞSFロマンである。僕はジョン・ウィリアムズの実力はベートーベンに劣らないと本気で思っている。「E.T.」も彼の作品であるが、彼の作品の場合、音楽が映画の娯楽要素を何倍も膨らませている。彼の作る曲は文字通り”感動”の一言である。

●特別編が劇場で公開!
 特別編として、SFXをよりパワーアップさせて、新しいシーンも付け加えて公開したが、これが大当たり。「E.T.」の記録を抜いて、歴代興行収入第一位に躍り出たわけだが、手直しなしでも大ヒットは確実だっただろう。なぜなら「スター・ウォーズ」に熱中していたファンのほとんどは、映画館のスクリーンで見る「スター・ウォーズ」を知らなかったからである。だからこそ、公開されるときいて、みんな心の底から喜んだ。僕も無論その一人だった。
 僕は、映画館では一番前のど真ん中に座ってやった。感動した。空中戦のシーンではあまりの嬉しさに思わず涙が出た。これが”映画”だ! そう言ってやった。

●シリーズ化されているわけだが・・・
 この映画は壮大なる大河物語のほんの一部にしか過ぎなかった。これは9部作のうちの4話目に当たる作品であり、その後、エピソード5「帝国の逆襲」と6「ジェダイの復讐」が大ヒット。ここ最近は「エピソード1」も公開され、政治的ニュースになったくらいである。しかし僕はこの77年の「スター・ウォーズ」が一番好きである。なぜなら、これは純粋に痛快娯楽大作として楽しめたからだ。
 しがない青年が、ひょんなことから帝国軍を相手に大冒険を繰り広げるという、古典的な冒険物語の王道をゆく内容で、例によって一国のお姫様も登場し、下手な教訓や甘っちょろい恋愛は何もなく、素直に子供心で楽しめる、おとぎ話のような内容だった。だからラストでお姫様に勲章をもらい、青年が英雄となる姿が最高に美しいのだ。そのまま表彰台からスタッフロールへと、あのテーマ曲にのせてディゾルブ。宇宙のようにバカでかい夢がそこにある。
 ところが、シリーズ化されて、青年と姫が兄妹だったという面白くない事実がわかったり、姫と無法者との恋愛が織り込まれたり、青年と強敵ダースベーダーが実は親子だったという飛びすぎた内容が、この77年「スター・ウォーズ」の醍醐味を殺してしまった気がする。特別編で付け加えられたシーンも余計なものばかりだし、「エピソード1」を見て、ますます辻褄が合わなくなって稚拙化してきた。しかもルーカスはエピソード2・3を作ったら、もうやめるなどと言ってやがるし、そりゃ無責任だぜ。
 だから僕は永遠にこのオリジナル「スター・ウォーズ」だけを愛し続けたい。

(第4号 「名作一本」掲載)

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