ウッドストック (名作一本)

愛と平和と音楽の三日間
Woodstock

【R指定】
<アメリカ/1970年/185分/ドキュメンタリー>
製作:ボブ・モーリス、デール・ベル
監督:マイケル・ウォドレー

●1969年のロック・フェスティバルを記録
 ウッドストックとは、ロック・ファンなら誰もが知っている、一大フェスティバルである。1969年8月15日~17日にかけて行われた、平和のための野外ロック・ライブであるが、何と観客の数は若者だけで40万人にも上った。それだけの人間が、狭い空間にすし詰め状態になって音楽に酔いしれたのである。
 この映画はそのとんでもないフェスティバルの模様を、粒子の粗い16ミリ・フィルムで記録し、アカデミー賞最優秀長編記録映画賞を受賞したドキュメンタリーである。

●サンタナのライブが圧巻
 フェスティバルには沢山のアーチストが訪れた。アメリカのサイケデリック・バンドから、イギリスの人気バンドもかけつけている。ジミ・ヘンドリックス、ジョー・コッカーのライブはなかでもクライマックスといえ、異様な盛り上がりを見せたが、僕個人的にはジャニス・ジョプリンとサンタナのライブに感動した。
 サンタナにとってはこのウッドストックでのライブは大チャンスだった。このライブが彼らのデビュー・ステージになったのであるが、その気迫たっぷりの演奏はとても素人とは思えない貫禄であった。この映画ではそのサンタナの熱気みなぎるカリスマ・ライブを気合いの入ったカメラワークでエネルギッシュに捉えている。
 なお、この映画ではライブに参加した一部のアーチスト(ラヴィ・シャンカール、グレイトフル・デッドなど)のシーンはレコード会社の関係で、カットされている。

●アメリカ文化を知るには最高の映画
 本作は、アーチストたちのライブをダイナミックに描写すると共に、観客たちの行動にも目線を当てているが、それはまさにカウンターカルチャー時代のアメリカをこれ以上ない形で的確に捉えている。この映画は”アメリカ文化”を知るための最良の映画なのである。
 第一に、ドキュメンタリーなので、生のアメリカ人を見られるわけだが、何しろ40万人がぎゅうぎゅうになっていて、しかも雨天でもお構いなしに3日間も続いたライブなわけなので、人の行動は見ているだけでも面白い。こんなに一度に多くの人間が見られる映画は他にはないだろう。それだけでも一見の価値がある作品である。
 素っ裸になって近くの湖で水泳する人たちだって中にはいる。足の踏み場もないような狭さのため、移動にも困っただろうし、夜は何と野宿だ。駐車場の車の量だけでもあっけにとられる凄まじさ。あまりにも映像の印象が強烈なので、レーティングではR指定になったほどである。そんな中、公衆トイレの掃除をしているおっちゃんの姿が妙に温かい。
 ライブが終わった後、捨てられた大量のゴミが会場中を覆い隠している様も、感動的といっていい景観だ。

●編集スタッフにはあの名前も
 この映画で編集を担当したスタッフの中にはマーチン・スコセッシもいた。映画史上最高のロック映画との誉れ高い「ラスト・ワルツ」を後に発表することになる人気監督である。映画では画面の下に歌詞を焼き付けるアイデアを提案したが、そのシーンは映画の中では一味違う印象を残していた。

(第3号 「名作一本」掲載)

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