風と共に去りぬ (名作一本)

Gone with the Wind

<アメリカ/1939年/232分/文芸>
製作:デビッド・O・セルズニック
監督:ビクター・フレミング
原作:マーガレット・ミッチェル/脚本:シドニー・ハワード
撮影:アーネスト・ホラー/音楽:マックス・スタイナー
出演:クラーク・ゲーブル、ヴィヴィアン・リー、レスリー・ハワード、
ハティ・マクダニエル、オリヴィア・デ・ハヴィランド

●マーガレット・ミッチェルの原作
 「風と共に去りぬ」の原作は、世界史においてシェイクスピアなどの作品と同等の評価を受けている。作者であるマーガレット・ミッチェルは突如この小説を持って登場し、これだけを置いて消えていった、何とも不思議な女流作家である。南北戦争を背景に、一人の女性が自立していく姿を描いたこの原作は、アメリカの歴史を知るなら他のどの本を見るよりもわかりやすいとも言われている。

●プロデューサー、デビッド・O・セルズニック
 最高文学「風と共に去りぬ」を映画化するということはとんでもないことで、自殺行為に近かった。しかしこれにワンマン、デビッド・O・セルズニック(代表作:「キング・コング」「レベッカ」「第三の男」)が挑戦した。それはもう話題になっただろう。製作には沢山の苦難があり、監督も何度か交代させ、結局セルズニック一人で全ての仕事をこなしていたといっても過言ではないだろう。セルズニックは脚本から小道具の細部までこだわり、見えるはずのない下着までも、当時のものと同じものを着せたという逸話もある。

●何もかも当時では考えられないスケール
 何しろあの名著「風と共に去りぬ」を映画化するわけだから、大衆の期待に応えられるものを作らなければならなかった。だから、南北戦争時代のアメリカを忠実に再現できる大がかりなセットを作り、当時は珍しかった総天然色カラーで撮影し、4時間弱の長尺として仕上げた。

●名物、女優選び
 レット・バトラー役は、ミッチェルがもともとクラーク・ゲーブルを想像して書いたというので、配役に何も問題はなかったが、逞しいヒロイン、スカーレット・オハラ役を誰が射止めるのかは大問題で、その頃一番の話題であった。色々な女優が志願し、また色々な女優がリクエストされた。人気のあった女優は1位ミリアム・ホプキンス、2位キャサリン・ヘプバーン、3位ベティ・デイビス、4位ジョーン・クロフォード、5位タルラー・バンクヘッド。しかし誰もイメージに合わなかった。ところが、当時チャールズ・チャップリンの恋人だったポーレット・ゴダードがオーディションを受けると、これがイメージにぴったり。ほとんど本決まりになって撮影も行ったが、重役の誰かがヴィヴィアン・リーを発見し、彼女の方がもっとイメージ通りだということで、起用することになった。アメリカ人の役をイギリス人が演じられるのだろうか、という不安もあったようだが、結果的には大成功。ヴィヴィアン・リーはハリウッドで最も美しい女優と言われるようになり、文字通り「スカーレット・オハラを演じるために生まれてきた」女優となる。

●ハリウッドで最高の映画になる
 「風と共に去りぬ」はとんでもない超大作に仕上がった。注ぎ込んだ製作費や上映時間の長さなどは「クレオパトラ」に超えられるまでは最高だったろうし、観客動員数でいえば、永遠に抜かれることのない記録をうち立てている。アカデミー賞も10部門で受賞し、まさにハリウッドに金字塔をうち立てる形になった。

(第2号 「名作一本」掲載)

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