デビッド・リーン (巨匠の歴史)
文芸映画最大の巨匠
David Lean(1908~1991)
●大河ドラマ作らせて右に出るものはいない
デビッド・リーンといえば、「アラビアのロレンス」、「ドクトル・ジバゴ」などの大作映画を撮った男という印象が強すぎるかもしれない。長期間に渡る海外ロケを行って完成させる作品群のスケールの大きさは、世界中の映画ファンをアッと言わせた。「アラビアのロレンス」では、70ミリフィルムで広大なる砂漠を魅力的に描き、人間が見えなくなるほどの超ロングショットのスケール感には誰もが溜息である。まさしく「巨匠」という言葉がよく似合う監督である。
●むしろ黒白時代に注目
スケールのでかい映画に代表作が多いためか、意外に初期の作品は知られていないが、初期の作品を知ってこそ、デビッド・リーンの才能を確認することができるのだ。
初期の作品は、モノクロで、上映時間も短いものばかりである。作風はウィットに富んでおり、「陽気な幽霊」、「ホブスンの婿選び」などを見ると、温かい気持ちにさせられる。さながらイギリスのルネ・クレールとも言うべき印象があり、イギリスの町並みに対する愛着が伝わってくる。
最も優れた作品は友人ノエル・カワードの戯曲の映画化「逢びき」で、医者と主婦の情事を描いたこの作品はイギリス映画史に名を残す名作となっている。
●チャールズ・ディケンズ原作
デビッド・リーンの作品には原作がある場合が多く、特にチャールズ・ディケンズの本を愛読していたようで、「大いなる遺産」と「オリヴァ・ツイスト」を映画化している。この2本はディケンズの小説を映画化したものでは歴代ベストといえる出来映えで、ストーリーの見せ方も映画らしくアレンジしており、世界的な名声を得るきっかけとなった。「大いなる遺産」はアメリカのアカデミー賞でも評価され、監督賞・脚本賞の候補に選ばれる。これをデビッド・リーンの真の最高傑作だとする批評家も少なくはない。
●中期作品「旅情」
前期の黒白の文芸映画と、後期のカラーの大作スペクタクルとでは、ずいぶんとスタイルが違っている。リーンは相当珍しい監督だったと思えるが、何がこうもスタイルを変えさせたのだろうか。
彼の「旅情」はその変換期に位置している。初めてのカラー撮影、初めての海外ロケ、色々初挑戦した。アメリカのビッグ・プロデューサー、サム・スピーゲルと組んだことで、資金に余裕もできて、製作費に気兼ねすることもなくなり、開放感を得た。これが転機となったのである。「旅情」は絶賛され、主演のキャサリン・ヘプバーンにとっても彼女のキャリアで何よりも印象的な作品に仕上がっている。
●嫌われ監督
デビッド・リーンは世界映画監督の人気投票では必ずトップ10に入る売れっ子であるが、スタッフ側から言わせてみれば、あまり好まれる性格ではなかったらしい。巨額の資金を使い果たし、長期に渡る撮影期間を費やしての、異常なほどに完璧を追求しようとする姿勢は、批判的な意見も多い。それほど彼が偉大な巨人だったということだろう。
David Lean(1908~1991)
●大河ドラマ作らせて右に出るものはいない
デビッド・リーンといえば、「アラビアのロレンス」、「ドクトル・ジバゴ」などの大作映画を撮った男という印象が強すぎるかもしれない。長期間に渡る海外ロケを行って完成させる作品群のスケールの大きさは、世界中の映画ファンをアッと言わせた。「アラビアのロレンス」では、70ミリフィルムで広大なる砂漠を魅力的に描き、人間が見えなくなるほどの超ロングショットのスケール感には誰もが溜息である。まさしく「巨匠」という言葉がよく似合う監督である。
●むしろ黒白時代に注目
スケールのでかい映画に代表作が多いためか、意外に初期の作品は知られていないが、初期の作品を知ってこそ、デビッド・リーンの才能を確認することができるのだ。
初期の作品は、モノクロで、上映時間も短いものばかりである。作風はウィットに富んでおり、「陽気な幽霊」、「ホブスンの婿選び」などを見ると、温かい気持ちにさせられる。さながらイギリスのルネ・クレールとも言うべき印象があり、イギリスの町並みに対する愛着が伝わってくる。
最も優れた作品は友人ノエル・カワードの戯曲の映画化「逢びき」で、医者と主婦の情事を描いたこの作品はイギリス映画史に名を残す名作となっている。
●チャールズ・ディケンズ原作
デビッド・リーンの作品には原作がある場合が多く、特にチャールズ・ディケンズの本を愛読していたようで、「大いなる遺産」と「オリヴァ・ツイスト」を映画化している。この2本はディケンズの小説を映画化したものでは歴代ベストといえる出来映えで、ストーリーの見せ方も映画らしくアレンジしており、世界的な名声を得るきっかけとなった。「大いなる遺産」はアメリカのアカデミー賞でも評価され、監督賞・脚本賞の候補に選ばれる。これをデビッド・リーンの真の最高傑作だとする批評家も少なくはない。
●中期作品「旅情」
前期の黒白の文芸映画と、後期のカラーの大作スペクタクルとでは、ずいぶんとスタイルが違っている。リーンは相当珍しい監督だったと思えるが、何がこうもスタイルを変えさせたのだろうか。
彼の「旅情」はその変換期に位置している。初めてのカラー撮影、初めての海外ロケ、色々初挑戦した。アメリカのビッグ・プロデューサー、サム・スピーゲルと組んだことで、資金に余裕もできて、製作費に気兼ねすることもなくなり、開放感を得た。これが転機となったのである。「旅情」は絶賛され、主演のキャサリン・ヘプバーンにとっても彼女のキャリアで何よりも印象的な作品に仕上がっている。
●嫌われ監督
デビッド・リーンは世界映画監督の人気投票では必ずトップ10に入る売れっ子であるが、スタッフ側から言わせてみれば、あまり好まれる性格ではなかったらしい。巨額の資金を使い果たし、長期に渡る撮影期間を費やしての、異常なほどに完璧を追求しようとする姿勢は、批判的な意見も多い。それほど彼が偉大な巨人だったということだろう。