ティム・バートン (巨匠の歴史)

映画で遊ぶ少年監督

Tim Burton(1958~)
    あと40年は活動できる監督なだけに、今ここで紹介してしまうのはかなり早い気もするけど、まあいいや。紹介しちゃえ。

●この人は、いわゆるオタク
 ティム・バートンは監督スターである。その人気はスピルバーグ並かもしれない。
 彼は俗に言う「オタク」であり(写真見ててもやっぱオタクの顔だぁね)、彼の映画は、幼稚な趣味に溢れている。子供の頃はホラー映画や怪獣映画が大好きで、ヴィンセント・プライスやヴェラ・ルゴシに憧れる変わった少年だった。この頃、自分のデザインしたゴミ防止キャンペーンのポスターが1等賞に選ばれ、それから絵の才能を磨き、ディズニーのアニメーターとして入社。23歳のときにヴィンセント・プライスをナレーターに迎えて監督した短編アニメ「ヴィンセント」が受け、数年後長編実写映画デビューを果たした。

●もちろん今の人気は「バットマン」から
 最初はテレビムービーの作品を多く手掛けていたが、88年の「ビートルジュース」の評判をバネに、翌年「バットマン」を演出。これが興行成績に記録を残す大ヒットとなり、ティム・バートンは全米劇場館主協会からディレクター・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。
 いつもチープな作品を作っていたバートンだったが、「バットマン」のときはジャック・ニコルソンという大物を相手に、莫大な製作費を注ぎ込んで制作したので、かなりプレッシャーだったらしいが、何とか乗り越えた。確かに「バットマン」はバートンらしさが隠れており、ハリウッド的な作品に仕上がっている感じはする。同作はバートンにとって転機となり、彼は以後メジャー系の大物監督として大活躍をすることになる。

●「シザーハンズ」で自己表現
 「バットマン」の成功に気をよくした映画会社は、ティム・バートンに自由に映画を作らせた。そしてできあがったのが「シザーハンズ」である。これは今までで最も自分らしい作品に仕上がった。大好きなヴィンセント・プライスも出演して、古典的ホラー映画の哀愁も感じさせ、なかなか感動的な作品である。これ以降の奴は悪趣味な感じが少しばかりあるが、「シザーハンズ」は趣味はおもちゃチックであるものの、ストーリーはいたって美しく、純愛な幻想寓話であった。バートンの熱烈なマニアはここから急激に増えていく。

●「エド・ウッド」で実力証明
 僕が一番好きなバートン映画は黒白で撮った「エド・ウッド」である。
 バートンの作品というものは、好き嫌い両派に別れそうな気がしないでもないが、「最低の監督」といわれたエドワード・ウッドJr.の半生を自分に準えて描出した「エド・ウッド」は、ヴェラ・ルゴシのオマージュ作品であると共に、映画監督という職業を見つめた感動の一本として、バートンが単なるオタクではないということを立証する「映画」の映画である。
 こういう人間ドラマも撮れるのだから、バートンの腕に偽りはないわけだし、彼もまだまだ若いんだ。温かい目でバートンの新作を待つとしようではないか。

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