ビッグ・フィッシュ (レビュー)

誰にも見せたくない僕だけの宝物
 5つ星である。僕のまったくの個人的趣味として、最高得点を付けさせてもらったが、それでもこれは他人に薦めたいとは思わない。偽善的だとか皮肉ぽいとかお涙頂戴とか、偏見の目で見られそうな気がするからだ。とくにインテリぶってあれこれとイチャモンつけるような理屈っぽい人には見てもらいたくないし、そうやって僕の幸福感を踏みにじられるのはごめんだ。たとえ作者のティム・バートンでさえ、何も語って欲しくないのである。だって、僕が思っていることと、バートンが考えていることが違っているかもしれないから。

 これは感覚的なものである。音楽を聴くことに理由が必要ないのと同じで、この映画を好きか嫌いかという気持ちにも、あえて理由をこじつける必要はないように思える。考えれば考えるほどに、雑念が邪魔し、この映画の不思議な魔力を殺いでいくような気がする。人生は奥深く、複雑なもので、悩んで当然のことだが、それをいったん忘れて、人生を無邪気に楽しむこと。この映画はそれを僕に教えてくれた。主人公のホラ話の夢のようなかっこよさ。まっすぐで、悩み事がなく、自由にのびのびと生きる。僕はこの生き様を見ているうちに、思わず涙がこぼれてしまった。映画館で僕が泣いたのはこれが生まれて初めてだった。人の一生って何だろうと、本気で考えた。他人に笑われるかもしれないが、僕はこれが好きだ。そう大声で叫びたい。

 これからこれを見ようと思ってる人たちにお願いがある。先入観を捨てて、素直な気持ちで、深く考えずに直感で見て欲しい。面白くても面白くなくても、それはそれでいいじゃないか。

監督:ティム・バートン
出演:
ユアン・マクレガー
アルバート・フィニー
ジェシカ・ラング
(2003年アメリカ映画)

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