ジョン・カーペンター (巨匠の歴史)

モダン・ホラーはカーペンターから

  ●きっかけはハワード・ホークス
 かなりカルトな監督だが、映画マニアなら「ジョン・カーペンター監督作」と聞いただけで見たくなるものである。実にクセのある映画ばかりを撮っているが、実力は確かで、「危険な情事」でもぜひ監督してほしいと依頼されたことがある。
 彼が映画監督になったきっかけはハワード・ホークスである。ホークスのSFホラー「遊星よりの物体X」に心底感動した彼は、自らこの映画のリメイクを熱望。名門南カリフォルニア大学の映画科で映画を学び、在学中にアカデミー賞の短編映画賞を受賞した。
 74年、親友のダン・オバノンと組んで「ダーク・スター」を発表。「2001年宇宙の旅」風のSF映画だったが、これが批評家にも受け、好調な出だしを飾る。76年には憧れのホークスのオマージュとして「要塞警察」を発表、これまた批評家から高く評価された。


●「ハロウィン」が大ヒット
 30歳で撮った「ハロウィン」はカーペンターの出世作となった。これはもう伝説的なホラーであり、ここからホラーの歴史が塗り替えられた。殺人鬼の視点になった一人称カメラや、ショッキングな描写は、後のスプラッター・ホラーの先駆といっていい。たった30万ドル、一ヶ月で撮影したものであるが、これは世界的に大ヒット。ヒッチコックの後継者と評価する者もいた。ホラー映画の価値を示したカーペンターを崇拝するホラー・ファンは今でも多い。


●有名作品を題材にして
 カーペンターは古典を好んだ。だから古典を題材とした作品も多かった。82年には念願のホークス映画をリメイクして、「遊星からの物体X」というタイトルで公開したが、オリジナルとはまったく趣向の違う、グロテスクなSFホラーとして完成させている。生首から足が生えてきたり、おぞましい映像が目白押しで、この手のギミック映画では、金字塔というべき傑作だ。
 この他、「呪われた村」を題材にした「光る眼」や、「透明人間」を題材にした「透明人間」などを、オリジナルとはまるで違うタッチで演出している。
 プロレスラーを起用して作った「ゼイリブ」は哲学感さえ漂わせる新感覚の異星人侵略映画で、同監督の野心が伝わってくる代表作だ。

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