ウディ・アレン (巨匠の歴史)
映画界のシェイクスピア
Woody Allen(1935~)
ブルックリン生まれのユダヤ系。
在学中に新聞にギャグやジョークを投稿し、やがて舞台などの台本を書き、クラブのトーク芸でコメディアンとして活躍。
1965年、俳優・脚本家として映画デビュー。
翌年からはマルチ監督として活躍、バスター・キートンの再来と騒がれる。
●アレンという男
ウディ・アレンはセリフだけで世間を笑わせることのできるコメディ作家である。会話シーンだけでこうも面白い映画に仕上げられる男は彼しかいまい。演技も上手いが、その口から発せられる幾分かどもった言葉は、シェイクスピア並のユーモアだ。英語圏の人間にしか理解できないといわれるほど奥が深いらしく、突然マニアックな言葉を引用するあたりなど、実にセンスがいい。
彼はニューヨークから決して離れず、ハリウッド入りしないままに映画製作活動を続けている。「アニー・ホール」からはスタイルが洗練され、以後の作品はどれも批評家の評価が高く、日本でもキネマ旬報ベスト・テンに毎度のことのようにランク・インしている。
マイペースでことごとく名作を作ってしまう余裕綽々の天才、それがアレンである。
●モチーフは人間関係における心理描写
彼の諸作のモチーフは、いつも人間関係における心理描写だった。
描かれていることは、恋愛から、セックス、その他様々だが、彼はニューヨークという大都会に生活する人々の生活を、登場人物の複雑な人間関係と心理描写を織り交ぜてユニークに綴った。
その心理描写は驚くべきもので、まるで彼は精神医学者であるかのようである。恐らく、彼は人が何を考えているのかがわかるのだろう。
●「分身」
ウディ・アレンは今時珍しく自作自演の監督である。映画史において、自作自演に成功した偉人はチャールズ・チャップリン、オーソン・ウェルズ、そしてウディ・アレンの3人だけかもしれない。
アレンの作品はプライベート・フィルムっぽい。彼の映画の大半には彼自身が登場するが、彼の演じるキャラクターは常に自意識過剰なノイローゼのユダヤ人だった。それはトレードマーク化している感じもあるが、彼の「分身」であることには間違いないだろう。彼は自分の心中を自分のキャラクターに託した。
●尊敬する監督はベルイマン
彼の尊敬する監督はスウェーデンのイングマール・ベルイマンである。映画を見ていると、いたるところでベルイマンの手法の真似が見つかる。特に家庭崩壊を描いたシリアス作「インテリア」などでは多大の影響を受けていることがわかる。
アレンは現代派コメディの天才であるが、ベルイマン・タッチの濃い演出が、その称号を得られた大きな所以かもしれない。
●D・キートンとM・ファロー
アレンの恋人といえる女優は2人いる。ダイアン・キートンとミア・ファローである。2人はアレンと何度も共演しているが、やはり2人ともアレン映画に出演しているときが一番輝いて見えるし、演技にも硬さがない。
キートンとは「ボギー!俺も男だ」で共演して以来恋に落ち、ずっとパートナーとして働いてきたが、やがて別れ、次に見つけた恋人ファローとも92年の韓国人養女スキャンダルにより破綻をきたし、まるで自作の「夫たち、妻たち」のように別れた。キートンとは再び新作で共演。
ちなみに、アレンとファローの間に生まれた息子は、まだ小さい子供のくせに大学に進学したウルトラ天才児である。
●驚異的アカデミー賞候補回数
アレンのアカデミー賞ノミネート回数というのは驚異的である。アレンは毎年一本の割合で順調に新作を発表しており、そのアイデア量には圧倒されるが、彼は「アニー・ホール」で最優秀賞を受賞してからはオスカーレースの常連者となり、特に脚本賞についてはビリー・ワイルダーの11回という記録を塗り替え、その偉業はなおも更新中である。
彼の凄い所は、これだけ候補に選ばれていながら、授賞式に全く顔を出さないこと。「アニー・ホール」が受賞したときも彼はパブで遊んでいて、翌朝になってようやく受賞の知らせを耳にしたのだそうだ。コメントについては全くなし。が、1年後になって初めて口を開き、「あの作品がオスカーを取ったことには私には何の意味もない。そのような受賞ごっこにはまるで関心がないんだよ。彼らが何をしていようが、私にはどうでもいいね」と言った。
●数々の俳優を発掘、手ほどきした
アレンの作品に出演すればオスカーが狙えるといってもいいくらい、彼の映画に出た役者のほとんどは演技が自然で、役のなりきり方がうまい。また、彼の映画に出たことで大スターへと発展していった者も少なくない。それだけアレンは演出上手なのだ。ダイアン・ウィーストに関してはなんと2度もオスカーを受賞させている。今までにどれほどのスターたちがアレン映画に出演したことか・・・。今後もアレン映画に登場する俳優陣には大いに期待できるだろう。
●映画をこよなく愛するシネマディクト
アレンはアメリカで最も映画評論家的な映画監督である。映画に対する愛情が自作の中にも溢れている。ハンフリー・ボガートを捩った「ボギー!俺も男だ」、オーソン・ウェルズのオマージュ「マンハッタン殺人ミステリー」、バスター・キートンにインスピレーションを受けた「カイロの紫のバラ」などなど、映画ファンなら胸がいっぱいになる作品が多い。だから僕はウディ・アレンが大好きなのだ。
Woody Allen(1935~)
ブルックリン生まれのユダヤ系。
在学中に新聞にギャグやジョークを投稿し、やがて舞台などの台本を書き、クラブのトーク芸でコメディアンとして活躍。
1965年、俳優・脚本家として映画デビュー。
翌年からはマルチ監督として活躍、バスター・キートンの再来と騒がれる。
●アレンという男
ウディ・アレンはセリフだけで世間を笑わせることのできるコメディ作家である。会話シーンだけでこうも面白い映画に仕上げられる男は彼しかいまい。演技も上手いが、その口から発せられる幾分かどもった言葉は、シェイクスピア並のユーモアだ。英語圏の人間にしか理解できないといわれるほど奥が深いらしく、突然マニアックな言葉を引用するあたりなど、実にセンスがいい。
彼はニューヨークから決して離れず、ハリウッド入りしないままに映画製作活動を続けている。「アニー・ホール」からはスタイルが洗練され、以後の作品はどれも批評家の評価が高く、日本でもキネマ旬報ベスト・テンに毎度のことのようにランク・インしている。
マイペースでことごとく名作を作ってしまう余裕綽々の天才、それがアレンである。
●モチーフは人間関係における心理描写
彼の諸作のモチーフは、いつも人間関係における心理描写だった。
描かれていることは、恋愛から、セックス、その他様々だが、彼はニューヨークという大都会に生活する人々の生活を、登場人物の複雑な人間関係と心理描写を織り交ぜてユニークに綴った。
その心理描写は驚くべきもので、まるで彼は精神医学者であるかのようである。恐らく、彼は人が何を考えているのかがわかるのだろう。
●「分身」
ウディ・アレンは今時珍しく自作自演の監督である。映画史において、自作自演に成功した偉人はチャールズ・チャップリン、オーソン・ウェルズ、そしてウディ・アレンの3人だけかもしれない。
アレンの作品はプライベート・フィルムっぽい。彼の映画の大半には彼自身が登場するが、彼の演じるキャラクターは常に自意識過剰なノイローゼのユダヤ人だった。それはトレードマーク化している感じもあるが、彼の「分身」であることには間違いないだろう。彼は自分の心中を自分のキャラクターに託した。
●尊敬する監督はベルイマン
彼の尊敬する監督はスウェーデンのイングマール・ベルイマンである。映画を見ていると、いたるところでベルイマンの手法の真似が見つかる。特に家庭崩壊を描いたシリアス作「インテリア」などでは多大の影響を受けていることがわかる。
アレンは現代派コメディの天才であるが、ベルイマン・タッチの濃い演出が、その称号を得られた大きな所以かもしれない。
●D・キートンとM・ファロー
アレンの恋人といえる女優は2人いる。ダイアン・キートンとミア・ファローである。2人はアレンと何度も共演しているが、やはり2人ともアレン映画に出演しているときが一番輝いて見えるし、演技にも硬さがない。
キートンとは「ボギー!俺も男だ」で共演して以来恋に落ち、ずっとパートナーとして働いてきたが、やがて別れ、次に見つけた恋人ファローとも92年の韓国人養女スキャンダルにより破綻をきたし、まるで自作の「夫たち、妻たち」のように別れた。キートンとは再び新作で共演。
ちなみに、アレンとファローの間に生まれた息子は、まだ小さい子供のくせに大学に進学したウルトラ天才児である。
●驚異的アカデミー賞候補回数
アレンのアカデミー賞ノミネート回数というのは驚異的である。アレンは毎年一本の割合で順調に新作を発表しており、そのアイデア量には圧倒されるが、彼は「アニー・ホール」で最優秀賞を受賞してからはオスカーレースの常連者となり、特に脚本賞についてはビリー・ワイルダーの11回という記録を塗り替え、その偉業はなおも更新中である。
彼の凄い所は、これだけ候補に選ばれていながら、授賞式に全く顔を出さないこと。「アニー・ホール」が受賞したときも彼はパブで遊んでいて、翌朝になってようやく受賞の知らせを耳にしたのだそうだ。コメントについては全くなし。が、1年後になって初めて口を開き、「あの作品がオスカーを取ったことには私には何の意味もない。そのような受賞ごっこにはまるで関心がないんだよ。彼らが何をしていようが、私にはどうでもいいね」と言った。
●数々の俳優を発掘、手ほどきした
アレンの作品に出演すればオスカーが狙えるといってもいいくらい、彼の映画に出た役者のほとんどは演技が自然で、役のなりきり方がうまい。また、彼の映画に出たことで大スターへと発展していった者も少なくない。それだけアレンは演出上手なのだ。ダイアン・ウィーストに関してはなんと2度もオスカーを受賞させている。今までにどれほどのスターたちがアレン映画に出演したことか・・・。今後もアレン映画に登場する俳優陣には大いに期待できるだろう。
●映画をこよなく愛するシネマディクト
アレンはアメリカで最も映画評論家的な映画監督である。映画に対する愛情が自作の中にも溢れている。ハンフリー・ボガートを捩った「ボギー!俺も男だ」、オーソン・ウェルズのオマージュ「マンハッタン殺人ミステリー」、バスター・キートンにインスピレーションを受けた「カイロの紫のバラ」などなど、映画ファンなら胸がいっぱいになる作品が多い。だから僕はウディ・アレンが大好きなのだ。