プルガサリ 伝説の大怪獣 (B級映画ラボ)

北朝鮮から生まれた怪獣映画の金字塔?
 これは北朝鮮の怪獣映画である。それも怪獣映画の世界では「伝説」とまで言われた作品。なんらかの問題で(政治問題か?)お蔵入りになり、一部のマニアで「怪物映画の金字塔」として崇められていた作品らしい。それが日本が世界で初めて劇場公開に踏み切った。映画会社は「解禁」とでかでかと宣伝して、その映画館ではハリウッド版「ゴジラ」の記録を塗り替えるほどの動員数に達したとか。
 僕もついこの間、この映画を見る機会に恵まれた。現在日本は韓流ブームのまっただ中だが、韓国映画ならいくらでもあるが、北朝鮮映画というのはかなりレアなのではないか? 僕自身北朝鮮映画は初体験である。しかしテイスト的には三国志とゴジラを足して2で割ったような内容だった。これがまたひどい出来栄えで、大作っぽく飾り付けているけれども、どこからみても安物の雰囲気。音楽も低予算ホラー映画よろしくシンセサイザー1台だけで演奏している感じである。
 怪獣の中に入っているのは「ゴジラ」のゴジラ俳優・薩摩剣八郎だという。日本からわざわざ招かれるほどの熱の入れようであるが、悪く言えばこれは日本の怪獣映画の二番煎じということになる。しかしストーリーを大人向けにアレンジしてある点でなかなか頑張っているとは思う。怪獣が最初は赤ちゃんみたいに小さいところが始まるのがヨロシイ。美人の姉ちゃんに可愛がられて、鉄を食べて食べて食べまくっているうちに巨大化し、やがては敵である役人たちをこてんぱんにやっつけるというお話だ。
 その他の怪獣映画と異なる点は、怪獣が主人公達の味方であるということ。しかもこの怪獣がどんな攻撃をうけてもびくともしない不死身の怪獣で、敵はまったく歯が立たない。だから見せ場のスペクタクルシーンにもまったく危機感を感じさせず、エピソードをだらだら羅列してあるようにしか見えないのである。
 ユニークなのは、戦争が終わった後。用済みになった怪獣は、今度は味方たちから迷惑がられるところだ。なにしろ底なしの大食漢である。いくら餌を与えてもきりがない。そこで育ての親の美人の姉ちゃんはこの怪物を葬ることを決意する。切ないラストも作りすぎという気はするが、努力は認めたい。
 




製作年:1985年・北朝鮮
原題:不可殺
監督:チョン・ゴンジョ
出演:チャン・ソニ、薩摩剣八郎
上映時間:95分

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