ドラゴンロード (B級映画ラボ)

ジャッキーの美意識炸裂
 ただひとつ、地上波ではテレビ東京だけが映画マニアのハートを捉えている。テレビ東京はゴールデンタイムも、お昼の専業主婦向け番組も、深夜早朝のお楽しみ番組も、かなりのマニアック路線であるが、充実している。最近は早朝にジャッキー・チェンのカンフー映画を放送しているが、こんなことやらかしてくれるのはテレビ東京だけ。バラエティ番組もテレビ東京が一番面白い気がする。アニメも充実。テレビ東京が見られない地域が可哀相である。何気なく見ていると、面白い。それがテレビ東京の魔力。
 ジャッキー・チェンの若かりし頃のカンフー映画「ドラゴンロード」を、先日テレビ東京で初めてみた。世代の人に言わせればこれはかなり有名で、映画館でも見たという人が多いようだ。
 いやー、若いジャッキーのかっこいいこと。サッカーとはねつきを融合したような独特のスポーツをやったりするところが注目された作品だが、やはり本当の見どころはジャッキーのカンフー対決に尽きる。屋根の上にいると、下から槍で突かれる。その槍を必死でよけまくるジャッキー。これがやたらとかっこいい。本人は悲鳴をあげまくっているのだが、ものの見事によけまくる。それをスローモーションで何度も美意識過剰に見せまくる。このナルシストぶりは、これは絶対ジャッキー本人の監督作に違いないと直感したが、やはりそうであった。
 ハイライトは最後の納屋での一騎打ち。納屋の形状を生かしたテクニカルなカンフーを繰り広げる。ここでもスローモーション入れまくり。美意識過剰に肉と肉のぶつかりあいを見せつける。飛び散る砂煙がまたかっちょいい。見事な殴られっぷりだ。そこが楽しい。子供の頃はジャッキー映画を見て、本当に殴りまくってるものと勘違いしたものだが、今この年になってみてみると、どのパンチもほとんど同じような効果音が使われてあることに気づく。もともとコミカルな作風なので、そんな作り物っぽさも全部許せちゃうのだが。
 あいかわらず可愛い女の子が出てくるが、ジャッキーは彼女にアタックするも、どうも振られた様子? ハリウッド映画なら、主人公と女の子をくっつけさせるか、ふられさせるか何らかの結果を必要とするところが、香港映画には結果など必要なく、ただ戦っているところが面白い。最後には観客に女の子の存在すら忘れさせている。そういうラブ・ストーリーっぽい要素を何も残さない作りが香港映画なのだと再確認。
 



原題:龍少爺
製作年:1982年
製作国:香港
監督・出演:ジャッキー・チェン
上映時間:95分
「ドラゴンロード」DVD

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