エンニオ・モリコーネ (巨匠の歴史)

まずはモリコーネの音楽を聴いてみよう♪
1.荒野の用心棒
2.夕陽のガンマン
3 .シシリアン
4 .アンタッチャブル
■スパゲティ・ウエスタンはモリコーネが作った
 イタリア映画なのにアメリカを舞台にした西部劇がある。人々はこれをスパゲティ・ウエスタンと呼ぶ。本家アメリカが作る西部劇と違い、スパゲティ・ウエスタンは野蛮で血なまぐさいイメージを世間に焼き付けた。決定的と言えるのはセルジオ・レオーネが監督した「荒野の用心棒」(写真)を始めとする一連の西部劇である。
 レオーネこそスパゲティ・ウエスタンの父とされているのが一般的な話であるが、しかしレオーネの才能だけではスパゲティ・ウエスタンをあそこまで有名にはできなかっただろう。その陰には映画音楽家エンニオ・モリコーネの名前があった。
 モリコーネの作る西部劇の音楽は、本家アメリカのそれとはまるで別の新しい音楽で、悪く言えば全くの偽物だった。本家ティオムキンが作るようなカントリー音楽にはほど遠く、どちらかというとメキシコ風のサウンドを全面に押しだしたものであった。エレキギターソロ、民族楽器、ハーモニカ、その他にも風変わりな楽器が盛り込まれ、不規則的なリズムを刻んでいたが、そこには一度聞いたら忘れられない独特な雰囲気があった。そこが結果的にスパゲティ・ウエスタンのイメージを何倍も膨らましたのである。日本ではともすれば本家西部劇の牧歌的な音楽よりも、むしろモリコーネのいぶし銀のサウンドが強く記憶されており、西部劇音楽=モリコーネの曲という誤った公式ができてしまった。これこそモリコーネの才能の賜物であり、彼のサウンドがいかに観客の心に残りやすいものであるかを証明している。

■冒険したければモリコーネを雇え
 モリコーネは今までに200本以上の映画音楽を手がけてきたわけだが、当然ながら、偉大なる映画監督の作品にも数多く関わっている。資質を引き出してくれた恩師であるセルジオ・レオーネの作品では毎度常連であったが、他にもピエル・パオロ・パゾリーニ、 ベルナルド・ベルトルッチ、ジュゼッペ・トルナトーレらイタリアの新世代の監督たちからも篤く信頼されていた。パゾリーニやベルトルッチの映画はただでも奇抜であるが、モリコーネのサウンドがより一層作品に独特の深みを与えており、ストーリーよりも音楽が作品の質を高めているケースも少なくない。だからイタリア以外の監督たちも、作品に異質な味付けをしたい場合に、こぞってモリコーネを雇うのである。
  フランスではアンリ・ベルヌイユが早くもモリコーネの才能に気づき、自作「シシリアン」に起用していた。
  モダンホラーの祖ジョン・カーペンターは「遊星からの物体X」でモリコーネに作曲を任せ、作品を成功に導いた。
  ローランド・ジョフィは「ミッション」でカンヌ映画祭グランプリを受賞し、以後もモリコーネに作曲を依頼している。
  「フランティック」はポランスキーの映画の中でもとりわけ独特なムードが漂う。
  ブライアン・デ・パルマは「アンタッチャブル」でモリコーネの曲を使い、スリリングな効果を上げた。
 以上、モリコーネのサウンドに人気があるのは、必ずや期待を良い意味で裏切ってくれるからだろう。モリコーネのサウンドは常に実験的であり、彼に音楽を任せることは、ある意味冒険である。あまりにもメロディがあざとすぎて失敗することもあるし、音楽だけがやたら目立ってしまったこともあるが、しかしそれでもモリコーネにすべてを任せようという気になってくるのだから不思議なものである。
  ところで、最近日本の大河ドラマの音楽を担当するというニュースを聞いたが、となるとさらにモリコーネの人気があがることも予想される。

オリジナルページを表示する