ビッグ・リボウスキ (B級映画ラボ)

すっかり枯れた男気がすこぶるかっこいい
 昔僕が「今週のスター」のコーナーでジェフ・ブリッジスを紹介したとき、「ビッグ・リボウスキ」について何も書いてなかったことで、多数の不満の声をいただいた(そのとき僕は「ビッグ・リボウスキ」を見てなかったために書けなかったのでした)。読者の皆さんが不満を言うのもよくわかる。たしかに「ビッグ・リボウスキ」はジェフ・ブリッジスの最高の演技が見られる作品である。もはやこれなしにブリッジスは語れなくなった。
  ストーリーだけを見ると、複雑でわかりにくくて、いまいち見どころがつかめないかもしれないが、映画の価値を左右するのはストーリーだけじゃないということを、これを観て再確認しようではないか。面白いのはブリッジスとグッドマンからほとばしる枯れた男のロマンチシズムである。二人とも腹がぶくぶくで、ぐうたらで、いかにも間の抜けたダメ男なのだが、それなのになぜだか微妙にかっこいい。酒飲みだが、ホワイト・ロシアという酒しか飲まないこだわり。ぶん殴られようがこの酒だけはこぼさない。イーグルスを否定しクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(僕の一番好きなUSロック・バンドです)を愛聴する趣味の渋さ。重たい携帯電話(時代性を強調している)を、電話に出る気がないくせに持ち歩くバカっぷり。死んだ相棒の遺灰を空き缶にいれて、とにかく成仏させてやる優しさ。どんなことがあろうとも、すべてを忘れてボウリングに没頭する刹那的で無茶苦茶な生き様。理解できないが、この二人からは、なんだか不思議とロマンチシズムを感じさせる。インディペンデント系作家の有力株であるコーエン兄弟は、しつこく贅肉を活写し、ブリッジスのたれたアゴを決して隠さない。道ばたに転がる枯れ草を狂言回しに仕立て上げ、それをボウリング(おそらくリボウスキという名前もボウリングのモジリだろう)のボールとダブらせているところも心憎い演出である。
 ちなみに、本作はアメリカ・イラク問題が背景になっており、フセイン大統領が劇中登場する貴重な作品でもある。

 




原題:The Big Lebowski
製作年:1998年
製作国:アメリカ
製作・監督・脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
上映時間:117分
DVD

オッサンからほとばしるロマンチシズム
「老人と海」(1958年/米)
「パピヨン」(1973年/仏・米)
「スペース・カウボーイ」(2000年/米)

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