ペット・セメタリー (B級映画ラボ)

悲哀は恐怖のスパイス
 どんよりとした雰囲気は、ホラー映画に最も多い演出効果である。「どんより」は観客の生理を刺激して、怖いと思わせる。ただし、それだけでは幾分か恐怖不足である。なにかしら動機が必要である。ホラー映画で一番重宝される動機は「悲しさ」である。恐怖の側面に悲しい動機があれば、シーンはうんと強調される。ホラー映画の大古典「フランケンシュタイン」しかり。この前話題になった「シックス・センス」や「アザーズ」もそうだった。悲しさはホラー映画には欠かすことのできない動機要素なのである。
 死体を蘇生させる禁断の墓を描いた「ペット・セメタリー」は、「フランケンシュタイン」と同じタイプのホラー映画である。多少不可解なところもあるが、ムード主体の映画なので、深く考えずに、とにかく悲しい恐怖を体験していただきたい。
 不慮の事故で息子を死なせてしまった男は、悲しみのあまり、禁断の墓に息子を埋めて生き返らせる。戻ってきた息子は殺人鬼となって、母親を惨殺する。男は今度は妻の遺体を蘇生させる。妻の目は息子にえぐり取られ、血がしたたり落ちている。男は妻に泣きつくようにキスをする。愛と悲しみと恐怖と狂気が錯乱する、衝撃のラスト・シーンである。僕はここで、死んだ恋人を蘇生させたフランケンシュタインがオーバーラップした。
  思うに、ホラー映画というものは、不条理に恐怖シーンを描くだけでは成立しない。恐怖には理由づけが必要である。「ペット・セメタリー」は愛があるからこそ、恐ろしく、悲しい。怪物や悪魔に意味もなく襲われるのではなくて、身内に襲われる所に意味があり、これがホラーとして成立させている。

 



原題:Pet Sematary (ペットの墓)
製作年:1989年
製作国:アメリカ(パラマウント)
監督:メアリー・ランバート
脚本:スティーブン・キング
上映時間:103分
DVD

どこか悲しげなホラー映画
「ザ・フライ」(86年/米)
「シザーハンズ」(90年/米)
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(94年/米)

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