100年前のクラシック映画から映画史を読み解く


経験で変わる映画観・・・東京歓楽街/歌舞伎町 (コラム)

<経験で変わる映画観・序>
 10年前に見た小津安二郎はいまひとつだったが、この年になって見直してみると、ものすごく感慨深いものがあった。黒澤明の「生きる」だって年を取るたびにその見方が変わった。ならば30年後にまた見れば、さらに感動は深くなっているに違いない。

 映画を見ていて、僕がつくづく感じることは、「映画を楽しむコツは人生経験を積むことだ」ということ。もうここだけに尽きる。僕は何か映画を見るたびに、いつもこの言葉を思い出す。これは僕にとって映画と付き合っていく上での永遠のテーマになっている。もちろんこれは映画に限った話ではない。森羅万象何でも、人生経験を積むことで、それはますます深みを増していく。

 僕が映画を何よりも好きなのは、映画こそ人生を最もわかりやすく形にしたものだからだと思っているからだ。ストーリーがあって、映像があるから、視覚的に最もわかりやすい。2時間1800円で楽しめる極上の贅沢ではないか。

※ここから先は期間限定の男性専用コラムになります。女性と子供はこちらへ。

 

<東京歓楽街/歌舞伎町>
 ここからは禁断の話になるかもしれないが、実は一昨日、僕は生まれて初めて風俗とやらに行ってみたのである。今まであえて風俗を避け続けてきたのには理由がある。性欲のために大金をはたくのはもったいないと思っていたことと、僕が21歳のころ、ラスベガスにあるカウガールのネオンの店でただ裸踊りを見ただけで800ドルもぼったくられたことがあって、こういう店をひどく警戒していたからだ。第一、風俗遊びは恥なのだと思っていた。

 しかし実際に行ってみると、別に汚らわしいものでもなく、これは人生一度は経験しておかなければならない世界だと感じた。僕がここにこうして包み隠さず書く気になったのも、実際に経験してみて、嫌なイメージがしなかったからだ。恥ずかしいものでもないから堂々と書こう。仮に僕に息子がいたとしたら、社会教育の一環でぜひ行かせたいとまで思わせた。そこには、僕のまったく知らない大きな「社会」があった。その「社会」を少しでも垣間見ることに価値はある。

 歌舞伎町は表向きは映画館、劇場、ゲーセン、アミューズメント施設のメッカであるが、そこには裏の「社会」がある。むしろ歌舞伎町は裏社会の方が有名になってしまった町だが、実際に行ってみると、これが普通の町と何も変わらないのである。裏の社会は「情報」なしには発見できないからだ。

 なにしろ裏の社会には看板がない。普通の賃貸マンションの一室に紛れるように点在しているので、ぶらりと歩いて見つかるものではなく、情報を頼りに入り口を探し出さなければならない。風俗情報誌に載っているものだけがすべてではなく、情報誌には載っていないマニアックな店も多数潜んでおり、戸を叩かなければ永遠に関わることのない、未知の世界がいたるところに広がっている。表社会の隙間に隠れた、その無数の「目に見えぬ社会」は、あまりにも強大で、想像を絶する規模である。

 事が終わった後、僕はさっそく古くからの友達4人に電話し、今日の出来事を逐一報告してやった。聞けば4人とも数え切れないほど風俗に行っているらしく、30になって風俗デビューした僕はかなりの異端者であったことに気づかされた。僕の友達は女と付き合うよりも安上がりだと割り切って行っていたほどだ。考えてみれば、料金は決して高いものではない。テレビゲーム2・3本分の金額で遊べるわけである。僕は30までお金のすべてを映画やテレビゲームにつぎ込んできたが、彼らは趣味のためのお金を節して女を買っていたというわけだ。

 脱線しますが、そっちの方の感想は、正直言うと、サービスが悪かったし、いちいち気に障ることを言うし、あまり気持ちのいいものじゃなかったんですよね。だんだん僕もその気がなくなってきて、結局抜かずに終わってしまいました。やっぱり、相手が本気で感じてくれなくちゃ僕も感じませんよ。

 でも、風俗を経験したことで、世界観がだいぶ変わったのは事実。僕は風俗は一回で懲りたけど、でも決して悪い経験じゃなかったと思う。一回だけでも相当勉強になった。恋愛映画やエロティックサスペンスの見方もだいぶ変わった。映画の中の男と女の心にも以前よりもより深く感情移入できるようになった。裏社会を描いたマフィア映画も以前よりも興味深く見られるようになった。考えてみても、風俗というものは映画の中にもよく描かれているものである。自分も経験すれば、またそこで映画の世界にもリアリティを感じとれるようになる。

 

<経験で変わる映画観・結>
 社会の裏を知らずして、映画は真には楽しめない。聖人みたいな良い子ちゃんにはわからない映画が、この世の中には少なからずあるということだ。先週久しぶりにジョン・ヒューストンの「黄金」を見たときも、人間の心には必ず悪が潜んでいることを再確認したし、先日テレビでエイドリアン・ラインの「運命の女」を見たときも同じことを思った。悪の心こそ、一番正直な心かもしれない。誰しも心の中に少なからず悪の部分はある。だからこそ、映画は面白い。

 長くなったけど(本当はもっと書きたかったが)、僕がいいたいのは、何事も、一度は経験してみることが大事だということだ。スポーツでも旅行でも、なんでもいい。とにかくいつもと違うことを恥ずかしがらずに、怖がらずに、面倒がらずにやってみよう。刺激のある何かを。そうすると、必ず世界観が変わってくる。もっともっと映画は面白くなり、人生は豊かになる。無論、悪いことはできないので、その辺の節度は守らなければならないのだが。

 僕は偉そうに書ける立場じゃないけど、経験こそ人生の糧だと思うので、経験するための「勇気と行動力」、これが生きていく秘訣になるのではないでしょうか。と、自分に言い聞かせるように書いてみました。

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