CHARON(カロン) (シネマガプレス)

高橋玄、すごい野心家の登場である。彼のスタートさせたプロダクション「GRAND CAFE PICTURES」の第1回作品「カロン」がいよいよ2月19日よりテアトル池袋にて公開される。GRAND CAFE PICTURESのコンセプトは、日本だけでなく、国際市場に通用する作品作りだという。撮影期間11日間、製作費2000万円という低予算映画ながら、これはたしかに国際配給向けの作品になっている。プロデューサーは日本と香港の橋渡し映画人ポール・チェン。彼はジャッキー・チェン映画や中国の巨匠チャン・イーモウ、「マトリックス」のアクション監督ユエン・ウーピンをサポートしたことでも知られている。すでに世界配給は決まっており、映画祭へのエントリーも始まっているという。
監督の高橋玄は、あくまで35ミリフィルム撮影と、CGも有名俳優も排除した映画作りにこだわりを見せる。この野心は本物である。今回僕はマスコミ試写でこの作品を拝見したが、実をいうと、最初はどうせくだらないB級映画だろうと高をくくって見たのだが、予想以上の出来栄えに感嘆してしまった。たしかにこれは日本映画でありながらも、洋画を見ている感覚に近かった。その描写は現代版「かぐや姫」との評価もあるように、どことなく神秘的な雰囲気が漂う。これは不思議な体験であった。
まだ誰も見たことのない星と同じ名前を持つ美しい女性カロン。彼女を妻にするためには「一切の性生活の不在」「私生活に干渉しないこと」「私を養わないこと」という条件を守らなければならない。常にカロンは神秘のベールにつつまれたままである。ある日、夫がこの掟をやぶったことで、カロンは姿を消してしまう。夫は、カロンの愛人と共に、カロンを探すための旅路に出る。という筋書きだが、少しずつ謎が解明していくミステリーの見せ方は絶妙。話が進むにつれ、どんどん作品の中に引き込まれていく。カロンの夫とカロンの愛人はまったく対極的な男であるが、この二人がしだいに打ち解けあっていくところもほのかな感動を呼ぶ。ラストの広い砂浜を見ていると、心が解放されていくような思いである。SF映画ではないのだが、とても不思議な魅力のある作品である。オススメ!


「CHARON(カロン)」
製作,日本配給/グランカフェ・ピクチャーズ 
配給/ゴールデン・ネットワーク(香港)
エグゼクティヴ・プロデューサー/鄭振邦
プロデューサー/高橋玄,川本淳市
監督,脚本/高橋玄
主演/川本淳市,水上竜士,森崎めぐみ
http://www.movie-charon.com/

ストーリー(プレスより)
作家・勝木大(水上竜士)は、結婚相談所で「一切の性生活の不在」「私生活に干渉しないこと」「私を養わないこと」という奇妙な条件を提示した太田秀子(森崎めぐみ)と結婚した。
だが、作家の妻となった秀子は、書店の店員・川杉由都、そしてギャングの示現道男(川本淳市)と暮らす娼婦・カロンという3つの顔を持つ多重生活者。
ある日、客に殺されかけたカロンは、自己防衛で傷害事件を起こす。カロンと道男の関係が変わり始めたその頃、夫である勝木は、妻が娼婦・カロンであると知り、客としてカロンをホテルの部屋に呼んだ。その翌日、カロンは町から姿を消した。夫と恋人にそれぞれ最後の食事をテーブルに残して。
元夫である勝木と、元恋人の道男は、それぞれ別の道からカロンの足取りを追う中で出会い、共にカロンを探す旅に出る。
そして、作家とギャング、ふたりの男が辿り着いた旅の先に見たものは、彼女がカロンと名乗り続けた悲しい謎の解答だった。
2005年3月1日追記
「カロン」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて、<ゆうばりファンタランド大賞>を受賞しました。<ゆうばりファンタランド大賞>とは映画祭応援団が期間中、映画を鑑賞された方を対象にアンケートを実施し、5段階評価で平均値を出したデータでランキングを出して一番評価の高かった作品に贈られる賞です。

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