イライジャ・ウッド (今週のスター)

90年代の子役でただひとりの勝者
 幼くして子役人生をスタートさせたイライジャ・ウッド。CMに数十本も出演する売れっ子で、大作映画にも次々と出演。「フォーエヴァー・ヤング」(92)、「ノース小さな旅人」(94)、「8月のメモワール」(94)、「フリッパー」(96)など。おそらく90年代もっとも輝いていた子役に違いない。
 子役というものは、なかなか生き残れるものではない。大人になると、別のものに興味を持って、引退する人もいる。俳優になりたくても、映画会社の方から捨てられる人もいる。いったいどこへ消えたのかジョゼフ・マゼロ(「ラジオ・フライヤー」(92)で共演)。儲けすぎて泥沼にはまったマコーレー・カルキン(「危険な遊び」(93)で共演)。いつの間にか、90年代の子役で、生き残っている俳優はイライジャ・ウッドだけになった(女優の生き残りといえば「アイス・ストーム」(97)で共演したクリスティーナ・リッチくらいだろうか)。イライジャの人気は現在も上昇中である。「危険な遊び」のころはカルキン坊やの方が有名だったのに、今となっては、当時のライバルたちと格が違う。イライジャだけが次のデケード(10年間)へ移ることを許された勝者だった。これが興行社会の弱肉強食の掟なのだ。
 「ディープ・インパクト」(98)、「パラサイト」(98)に出たときには、彼もハンサムになったものだと思ったが、それから3年後、若干二十歳にして、21世紀最初のスペクタクル「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(01-03)の最重要人物を演じることになった。同作はその年もっとも話題を独占した作品である。ほとんどの出演者が激しいアクション・シーンを演じていたのに対し、主演のイライジャだけはじっとしたまま、ひたすら苦しみと闘い続ける勇者を全身全霊で演じていた。イライジャは作品に哲学的要素を加味する重要な役目を果たし、同作で子役俳優から性格俳優までの変態を無事に終える。彼の本当の役者人生は、これからスタートする。

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