100年前のクラシック映画から映画史を読み解く


ラピュタ阿佐ヶ谷 (シネマガプレス)

 今回はちょっと趣向を変えて、東京の映画館の中でも「これはスゴイ!」と叫びたくなる5つ星映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」を突撃レポート! レンタルビデオ店ではまず見つからない隠れた名作を上映する良心的な映画館だ。上映する作品の選び方はとにかくセンス抜群。毎日毎日モーニング、デイタイム、レイトショー、それぞれ色合いの異なる凝った企画を展開しているため、1日の上映内容だけでもかなり盛り沢山である。ここまでこだわってくれなんて、映画ファンにとっては感動で涙ものだ。このページではそんな「ラピュタ阿佐ヶ谷」の魅力を、1ページまるまる紹介する。
ラピュタ阿佐ヶ谷7つのコダワリ
(1)森の中の映画館
ラピュタ阿佐ヶ谷は、館主・才谷さんの熱い思いが形になった映画館である。東京の町中に、森があって、その中に不思議な妖精の世界がある。そんな、宮崎駿のアニメの世界を思い起こさせる幻想的な映画館である。映画館に来ただけで、館主の映画愛を感じとることができ、映画を見る前から幸せ気分にさせてくれる。木や池、螺旋状の階段、石造りの外壁、風力発電機、眺めの良いテラス。すべてが映画みたいな映画館だ。

(2)受付は小ギャラリー
ウッド調の室内。外光が差し込む大きなガラス窓。自然の温もりがする受付ロビーは、他の映画館とは一味も二味も違う。朝から晩まで、違う映画を入れ替え取っ替え上映する映画館なので、できれば1日に何本でも見たいもの。そういう常連客がゆったりと休憩できるように、ロビーは小ギャラリーになっている。チラシや雑誌・映画専門書、スティル写真や映画館の模型などが展示してある。嬉しいのはコーヒー・サービス(有料)があること。トイレにもコダワリがあるし、いろいろなところに隠れている動物たちのインテリアも愛嬌がある。本当に映画館?と思ってしまうほどゆったりと落ち着く空間である。

(3)映写室が見える館内
木と石で作られた館内に、ゆったりと座れる座席。背もたれを通常の映画館よりも高めにしたところにラピュタ阿佐ヶ谷のコダワリがある。座席数は50席。初めて来るお客さんがびっくりするのは、映写室が丸見えだということ。どういう風に映写するのか、見学できるようになっている。こういう気配りが、映画ファンにはたまらない。ちょっとした「ニュー・シネマ・パラダイス」気分が味わえる。

(4)日本の名画
ラピュタ阿佐ヶ谷は日本映画が熱い(※)。昭和時代のレトロな日本映画をチョイスして上映。「この監督、この一本。」企画では日本を代表する巨匠たちの作品を一本ずつ公開。毎朝のモーニングショー「昭和の銀幕に輝くヒロイン」では、日本映画を彩った麗しきヒロイン、京マチ子(第16弾)、新珠三千代(第17弾)らそうそうたる名女優たちをシーズンごとに1人ずつじっくりと特集している。その他にもジャズ音楽をテーマにした「オフ・ビート・ジャズ」特集など、毎回毎回ユニークな企画が目白押しだ。
スタッフは、日本映画についてこう語っている。
「昔の日本映画って、食わず嫌いなところがあると思うんですよ。今は高齢のお客さんが多いんですが、一度見たら絶対にハマると思うんで、若い人たちにももっと広げていきたいと思っています」
(※外国映画も上映します)

(5)アート・アニメーション
アニメーションの上映は、ラピュタ阿佐ヶ谷最大の目玉ともいえる。館主・才谷さんのコダワリがよく表れた企画である。これまで、ノーマン・マクラレンや手塚治虫の短編、「木を植えた男」、「雪の女王」、「ファンタスティック・プラネット」などの名作を上映。一方で、劇場版「ドラえもん」特集など、子供向けのイベントも忘れていない。
毎年秋には「アニメーション・フェスティバル」を開催。コンペティション部門「ユーリ・ノルシュテイン大賞」の審査委員長にロシアからユーリ・ノルシュテイン御大を招待するなど、他の映画館ではとても考えられない大きなことをやっている。こんなコダワリのある映画館は日本ではラピュタ阿佐ヶ谷だけしかないだろう。ラピュタはこの他にも自社配給などもやっているので、ほんと尊敬しちゃいます。

(6)フィルム上映
フィルムでしか上映しないというのは、ラピュタ阿佐ヶ谷の頑固なコダワリだ。
「最近は時代の流れなのか、DLP上映が増えていますが、うちでは旧作をかけているだけあって、できるだけフィルムにこだわりたいなと思っています。プリントはすぐにダメになるので、けっこうかけるのが厳しい状態のものもあるんですけど、それでも絶対にフィルムでみたいという人がいるので」
なるほど。デジタルではなく、フィルム本来の温かさ。そこまでして旧作の上映にこだわる。それがラピュタ阿佐ヶ谷の真摯なところである。

(7)劇場とレストランが共存
ラピュタ阿佐ヶ谷の魅力はこれだけではない。ラピュタは生きた文化複合施設で、建物の地下1階は劇場「ザムザ」。3階はレストラン「山猫軒」となっている。仕事で疲れたサラリーマンが、息抜きとして気楽に映画館に来られるように、様々な工夫が施されてあるのだ。まったく、どこまでも奥の深い、本当にスゴイ映画館だ。

取材・撮影・テキスト:澤田
 





ロビーはこんな感じ。心が和むなあ。

 


ギャラリーには興味深い本がいっぱい。

 


休憩時間にコーヒーでもいかが?

 


館内はこんな感じ。座席の色がオシャレだ。

 


映写技師さんの活躍ぶりも見学できちゃう。

 


壁にはなんとノル先生のサインが!
ありがたく拝ませてもらおう。



ラピュタ阿佐ヶ谷公式サイト


JR中央線・総武線 阿佐ヶ谷駅 北口より徒歩2分
(新宿より快速9分 土日祝日は各駅停車をご利用下さい)
阿佐ヶ谷駅北口を出て線路沿いを荻窪方面へ
右手に見えるTOAフィットネスクラブの北側

〒166-0001
東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-12-21
TEL:03-3336-5440

オリジナルページを表示する