ステップ・イントゥ・リキッド (シネマガプレス)

真夏に見る清々しい一本。見終わった後、あなたもきっとサーフィンをしたくなる。
サーファーたちによるサーファーたちのためのドキュメンタリー映画。監督もスタッフもサーファー。音楽担当のギブスももちろんサーファーで、この映画のためにほとんど無料奉仕で楽曲を提供。金目当てなのではなく、純粋にサーフィンの楽しさを映像にした映画で、好きでなくちゃこんなものは作れないという格好の例である。

ドキュメンタリーだからといって侮ってはダメ。一切作り物はなし。全てホンモノの映像は、フィクション映画にはない圧倒的な迫力がある。これ一本で大波小波あらゆる波が収められているが、その全ての波に大喜びして乗りまくるサーファー野郎たちの表情がまたなんと溌剌としたことか。彼らの爽快感は、我々観客にも伝染していく。

波の乗り方がどうのとか、板にはどういう種類があるのかとか、なぜ板にワックスを塗るのかとか、そういう理屈は抜きにして、ひたすらサーファー達のインタビューと、彼らが波と戯れている様子だけで構成されている。そのため、サーフィンに興味がない人は、冗長に感じるところもあるかもしれないが、しかし、あるとき瞬間的に、「これがサーフィンか」という発見と共に、大きな感動を実感できる。

サーフィンと聞いて、チャラチャラした男たちがやるスポーツという悪い固定観念を抱いている人もいるが、それはまったくの誤解だということが、この映画を見てわかる。小さな子供も無邪気に波乗りを楽しんでいるし、女の子たちも普通にやってる。特にいい年したおっちゃんがフラフラしながらサーフィンしている映像など、「これだったら俺にでも出来そう」なんて気にさせられる。かくいう私も、これを見てから、矢も盾もたまらなくなり、その翌週、サーフィンをやっている友人に頼み込んで、早速サーフィンに初挑戦した。初めて波に乗ったときの興奮はとても言い表せないが、それと同じ感動が、この映画にも描けているといっていい。下手クソなくせに、雨にも負けず風にも負けず、30年近くも毎日必ずサーフィンに出かけているというロマンチックなオヤジも登場するが、このこだわりっぷりは感涙ものだ。なにが彼をそこまでさせるのか。

私が一番感動したのは、オーストラリアのプロ・サーファーの華麗なるテクニックだ。波が筒状になって、いかにもサーフィンらしい映像が満喫できる。地球上にこういう波があること自体にも驚かされるが、それにニコッと笑って軽々と乗ってしまうプロ・サーファーの人間離れしたパフォーマンスにはほれぼれしてしまう。サーフィンって、こんなだったんだ!
 







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Step Into Liquid
2003年/アメリカ映画/35mm/ビスタサイズ
配給:グラッシィ
監督・脚本:ディナ・ブラウン
撮影:ジョン・ポール・ビーグリー
音楽:リチャード・ギブス

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