イーサン・ホーク (今週のスター)

スターのオーラがないところが取り柄
 イーサン・ホークは昔から僕のごひいき俳優だった。僕が初めて見たイーサン・ホークの出演作は「生きてこそ」(93)。ビデオレンタルで見た。この頃の僕はあまり映画に興味がなかったけれども、「飛行機事故で遭難して、人肉を食べて生き残る話」ときいて、なんだか面白そうだから見てみた話だ。そしたらイーサン・ホークがかなりかっこよくて、「外国人ってかっこいいなぁ」「僕もこうなりたいなぁ」と憧れのようなものを抱いたものである。ちょうど同じ頃、学校で「いまを生きる」(89)を見せられて、またまたイーサン・ホークが出ていたものだから、すっかり気に入ってしまった。第一名前の語呂からしてイカしてた。

 あれから僕の映画をみる目もだいぶ肥えてきたつもりだ。あらためてイーサン・ホークを見てみると、彼はいわゆるハンサム系の俳優とは別のような気がしてきた。都会的な気取った感じがしないし、童顔で、どちらかというと普通の青年ってとこだ。だから僕もしばらくの間、イーサン・ホークのことはどうでもいいと思っていた時期があったのは事実だ。しかし、もっとよくよく見ると、出ている映画が一癖違っていたし、イーサン・ホークの一癖というのは、どちらかというとマイナーな意味での一癖であって、いわゆるスターのオーラがあまり感じられなかったのだが、むしろそこが彼の取り柄になっている感じで、今ではアメリカのミニシアター映画の顔になったような気さえしてきて、再評価すべき時がきた。彼を常連のように起用するリチャード・リンクレイターとアンドリュー・ニコルの2人は、僕が今最も注目にしているミニシアター系の監督だし、ニコルの近未来SF「ガタカ」(97)を見て僕はイーサン・ホークをまったく見直した。「ガタカ」は僕にとっても野心を持つことを教えてくれた人生を変える特別の映画になった。彼は同作で共演したユマ・サーマンを主演に「チェルシーホテル」(01)ではついに監督業にも進出。ますますミニシアターの世界を盛り上げていきそうな野心家である。

 その他の気になる作品をいくつか紹介しよう。デビュー作は「エクスプロラーズ」(85)。まだ子役だ。手作りの宇宙船にのって宇宙を旅するというキッズ映画。「リアリティ・バイツ」(94)は青春ドラマ。イーサン・ホークの出世作。「恋人までの距離<ディスタンス>」(95)は旅先で出会った女との一夜を長回しを駆使して描いた作品で、イーサン・ホークの長ゼリフが冴え渡る彼の隠れた最高傑作。「大いなる遺産」(98)はディケンズの小説を現代のアメリカで再現。「ヒマラヤ杉に降る雪」(99)では工藤夕貴と共演。「テイキング・ライブス」(04)は豪華スター共演の犯罪ドラマだ。最近はアゴ髭がよく似合う。良い具合にシワがついてきたので、今後も性格俳優として活躍していくことだろう。

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