『ラビット・ホラー3D』
--「3D映画は進化するしかない状況なんです」
3D映画の大著『3D世紀/驚異!立体映画の100年と映像新世紀』
谷島正之さんに聞く3D映画の世界
『アバター』始め、現在3D映画が主流になりつつあるが、3D映画の世界を余すところなく書いたある一冊の本がある。その名も『3D世紀』。全632ページという凄まじいボリュームで書かれた3D映画の専門書である。
『3D世紀』は全三部構成あり、第一部では3D映画の歴史を豊富なカラー写真を添えて掲載、第二部は3D映画を企画製作することについてのドキュメントになっており、第三部では3Dの映像技術をわかりやすく解説している。至れり尽くせり、あらゆる視点から3Dについて考察・論じた、これほどの内容の本は世界を見渡しても他にはない。
先日、『3D世紀』の共同著者の一人である谷島正之さんに話を聞くことができた。谷島さんはアジアで初めての長編デジタル3D映画『戦慄迷宮3D』(09)を製作したプロデューサーで、日本では最も3Dに精通した業界人と言える人である。谷島さんから、3Dに限らず、今日の映像技術について様々な話を聞くことができた。(インタビュアー:澤田英繁)
谷島「このインタビューのために、先週『ホビット』と『ライフ・オブ・パイ』を見ておきましたよ。『ホビット』はハイフレームレート(通常の倍の1秒間48コマの映像)でしっかり見ました」
澤田「『ホビット』のハイフレームレート、どうでした?」
谷島「映画には48コマ必要ないですね」
澤田「ですよね。僕も正直『ホビット』にはがっかりしたんです。テレビを見てるような映像でした」
谷島「80年代のNHKがハイビジョンを導入したときのキネコ起こしの映画みたいな雰囲気がしますよね。ハイビジョン放送を劇場で公開するような感じで」
澤田「むしろフレームレートを変えられるんだったら逆に12コマとかフレームレートを減らす方を試して欲しかったなと思いましたよ」
谷島「『ホビット2』、『3』あるじゃないですか。おそらくそれがフレームレートを落とすはずがないんですよ。今ジェームズ・キャメロンが48か60で『アバター2』、『3』と作ろうとしてて、恐らく僕は60コマに行くと思うんです。48であの有様で、60に行ったとき今度どうなるか、一応見てみたい。けど、『ホビット』を見る感じだと48コマは必要ないですね。24コマで人間は慣れ切ってるじゃないですか。人間が感じる映像は24コマ、それが遺伝子レベルまですり込まれている事を実感しました。3Dは如実にジャダー(ブレ)が出てしまう事があるから、それが抑えられるのはよくわかったけれど、その分、絵がクリアーすぎます。ブレないからこそ逆にぎこちなく見えるんですね。24コマのブレが、僕らは映像だという風に思っちゃってるから48コマでは見てられないというか。やっぱり約120年の映画の歴史の中で、人間の遺伝子に組み込まれた映像というのは24でしかない。でもフレームレートはこれからも上がっていくはずです」
澤田「今後はもう24じゃなくなっていくんですかね」
谷島「デジタルの“恩恵”っていうのはそういうことですよね。やっぱりフレームレートがどんどん上がっていかないと面白くないんですよ。フィルムで48コマやると大変なことになるけど、デジタルはお金をかけずにあげられるから。あと、4K。要するに解像度をあげるってことですね。映像って空間解像度と時間解像度なんですよ。1秒が24コマ。それを時間軸であげようというのが時間解像度。空間解像度というのは平たくいうと走査線を多くする。その代わり容量は巨大になるので、ダウンロードしたりとか、映像のソフトを作っていくときに膨大な時間がかかる。先週もラスベガスで新型テレビが発表されていましたが、4Kが今のトレンドなんです」
澤田「家電量販店でちょっと見てみたんですけど、まだテレビの3Dの映像がイマイチな感じがするんですけど」
谷島「そんなことないですよ。それはガサツな店頭だからでは。3Dテレビを買って普通に家で見てみると考え方が変わりますよ。3Dって、よく劇場によって見え方が違うって言いますよね。例えばRealDとXpanDは違う。当然IMAXとRealDは違いますよね。さらにもっと大きな原因を『ラビット・ホラー3D』(11)を作っていて突き止めたんですけど、劇場によって、映写機の光量が違うんですよ。これは劇場によってばらばらで、規格が統一されてないんです。さらに電球ってだんだんと消耗していくじゃないですか。劇場によって電球の消耗が違うことは大きいことだと思うんです。だから古い映画館だと鮮やかな立体像に見えなかったりするんです」
澤田「XpanDのときは、映像が暗くなるイメージがあるんですけど」
谷島「暗いですね。電気を送ってる電工シャッター形式なので、レンズが分厚いから。RealDは単に黒いフィルターがかかっているだけだから明るさは違います。でも一番大きいのは電球なんですよ。映写装置は各劇場でまちまちなんです。それに比べ、テレビの3Dって最高なんです。なぜならバックライト。映画館は投射するじゃないですか。投射すると空間を映像が走るわけですからどうしてもぼやんとしちゃうんです。映像の輝度が落ちる。テレビの3Dはすごいですよ。バックライトで、要は後ろから光を当ててますんで、当然立体感から画像の明るさから違います。とくに大口孝之さん(『3D世紀』共同著者/映像クリエイター、3D映画評論家)はいち早く3Dテレビを買って、その凄さを言われてました。特に、もう『アバター』が素晴らしいと。立体感、映像のメリハリ、陰影・・・ものすごく増長されて、すごいです」
澤田「『ライフ・オブ・パイ』はどうでした?」
谷島「映画として総体的には、まあまあかな。3Dの考え方って、尽きるところ2Dとあまり変わらなくて、基本は脚本だというのが僕の持論なんですね。『ライフ・オブ・パイ』は物語として面白くなかった。つまらないわけじゃないんですよ。ただ期待値が高かった。それにしてはこんな程度か、と。僕はアン・リーの映画をかつて3本宣伝してるから、彼が大好きなんですよ。かたや3Dに関してはどうかと。お金を使ってるからやっぱりすごいんですけどね・・・」
澤田「『戦慄迷宮3D』はアジアで最初の3D映画になりましたね」
谷島「『戦慄迷宮3D』って、2009年の10月17日に公開してるんです。その年の12月24日に『アバター』が公開されて、26日に日劇で『アバター』を見たんですけど、そのときの感想というのが、”安心した”ということだったんですね。なんでかというと、やっぱり僕らの低予算の3Dでは到底思いつかないような3Dの世界観を作ってるだろうなと思ってたんです。そしたら僕らができてなくて彼らがやれてることはなくて、僕らも『アバター』もやってることは同じだと思ったんです。ただお金は3桁くらい違いますよ。僕らの製作費の230倍向こうはあるから、奥行は向こうの方が230倍あるんです。それっていうのは3DというよりもCGですよ。CGでどんどん惑星パンドラを作っていったんです。アニメなんですよ。お金があっていいなと思ったのはそれだけだな」
澤田「僕も『アバター』はアニメだと思いました」
谷島「『ライフ・オブ・パイ』は、演出方法として、プールに浮かんでる少年を水の底から撮って、さらに向こう側に空を抜いてるんですよ。そういったところの発想はすごいと思う。でも技術的に新しいかと思ったらとてもそうじゃない。大海原に船が一艘、それを3Dというのは、設定としては美しく、ぴったりですよ。でも新しい画期的な3Dの映像にはなってない。ストーリーとしてもまあまあだし、3Dとして特段すごいということはない。『ホビット』も同じですね。3Dとしてはまあこんなもんなんだろうな。3Dはやれることが限られ、ハンディキャップがありますから」
澤田「どういうところが限られるんですか」
谷島「まず3Dって二重苦三重苦で、速さに弱いんです。3Dの原理って、画面に映ったものをメガネを通して脳の中で3D化するんですね。コンマ何秒、3Dにするのに時間がかかるんです。そういう意味ではカメラが速かったりすると3D視ができない。長回しでカメラがゆっくりであればあるほど3D視できるんです。一番端的な発想はスローモーションです。そうすると3Dが頭の中で増長されるんです。そういう意味でカメラの速さに弱く、編集の速さに弱い。アメリカ映画って編集するときパカパカ、カットを割るじゃないですか。編集が速いとワンカットを立体視するのにも時間がかかるわけで、そこが1秒なのと15秒なのとでは全然違うんです。これは映画としては相当ハンディキャップです」
澤田「なるほど」
谷島「テオ・アンゲロプロスの映画を3Dでみたらさぞかしすごいだろうと、新鋭監督の松江哲明さんが言ってました。ものすごくカメラがゆっくり動くでしょ。しかも風景が壮大で。普通で見てると眠くなる映画ですよ。それを3Dで見たら迫力を増して絶対眠くならない。タルコフスキーの映画もそうですよ。”ホラー映画、3Dにぴったりですね”とよく言われるんですけど、そうじゃない。ジェイソンがナタを画面に向かって速く振りおろすと恐怖が増すじゃないですか。でも3Dは速さに弱いからゆっくり見せなきゃダメ。3Dはホラー映画に最も適してないスペックなんです」
澤田「『バイオハザードIV』では大きな斧がスローモーションで迫ってくるのが怖かったですね」
谷島「あれって『マトリックス』以降ハリウッド映画で流行った手法ですよ。『マトリックス』ってジャンプするとカメラが静止してゆっくり回り出すでしょ。あれと同じですよね。ここぞというときにカメラがゆっくりになって逆にアクションを高めた。その方法論が3Dにハマったということですね。あれがハリウッド映画の主流になっちゃいましたね。『トランスフォーマー』とかその連続ですよ。ものすごい速度で走り出して主人公を救うところで急にスローモーションになる。そのスタイルで3Dになったら見事にフィットしたんです」
澤田「もともと2Dで作ったものを後から3Dに作り直すことについてはどう思いますか?」
谷島「僕はもってのほかだと思ったんです。2Dで作った映画を3Dにするのはつまらなかった。適当にレイヤーで切ったみたいな感じで、とても立体効果がないです。やっぱり3Dの空間で3Dを理解した人が3Dカメラ(2眼式のもの)で撮るのがベストだと思っていた。そしたら変換の技術は1年間であっという間にあがったんですよ。『アベンジャーズ』なんかは素晴らしい3Dで、ライブで撮ったのかと思ったら変換3Dなんですってね。そういう意味では今まさに変換の3Dの迫力が増して来ています」
澤田「いつ頃から技術が向上したんですかね」
谷島「それの転換期は2012年の春なんです。ジョージ・ルーカスとジェームズ・キャメロンがコンバージョン(変換)3D作品を出したんです。『スター・ウォーズ エピソードI』と『タイタニック』を3D化してるんです。二大巨匠がそれぞれの手法で2Dの映画を3D化したんです。それではっきりわかったんです。キャメロンのコンバージョン3Dは素晴らしかった。ルーカスの3Dは自他ともに認めてひどかったんですよ。この2人が2つとも成功したり2つとも失敗していたら違ったと思う。かたや失敗してかたや成功したというのは、その後の3Dの変換作業の実に良い実例になったんです。3Dマスターのキャメロンがあれだけ変換を否定していたのに、自分で目にものを見せたというね。かたや見よう見まねでやったルーカスの3Dがうまくいかなかった。ルーカスの3Dはリアルすぎたんですよ」
澤田「リアルすぎたとは?」
谷島「要するに3Dというのは所詮は嘘の産物なんですよ。2Dの映像をどうやって立体的にショーアップするかなんですね。3Dでメガネを外すと二重にだぶるじゃないですか。『スター・ウォーズ』を見に行った人がメガネを外してもだぶってなかったって言ってるんです。それはどういうことかというと、3Dとして満足のいく立体空間が成立してなかったんです。ルーカスはリアルさを追求したから立体感が出なくなったんですよ。空間を増長するのが3Dなので、そこには大きな嘘があるんです。そこをルーカスは取り違えた。キャメロンはそれをすべてわかっていて見事な3D作品を作ったんです。悪い例と良い例ということで、その後のクリエイターにとっての教科書になったんです」
澤田「普通に3Dカメラで撮ったらルーカスみたいな絵になるんじゃないんですか?」
谷島「撮影するときに3Dとしての“振り付け”がなされているかどうかで3Dは変わるんです。2カメでちゃんと撮影してもつまんない3D映画っていっぱいあるじゃないですか。監督に3Dとしてその映画を作るセンスがあるかどうかなんです。『戦慄迷宮3D』は清水監督に完璧なる3Dセンスがあったと僕は思うんです。わざとらしいカットがいっぱいあったじゃないですか(笑)。悪い意味ではないです。赤い絨毯の長い廊下とか、3Dの発想で画面をショーアップしてるんです。作り手が3Dの作法を理解できてるかどうかが勝負だから、その意味では変換も撮影も同じなんですよね」
澤田「キャメロンが3Dを開拓していった感じがしますね」
谷島「キャメロンのいいところはハッタリが効いているところなんですよ。やっぱり『殺人魚フライング・キラー』をデビュー作として撮った監督ですから、発想がハッタリなんですよ。『タイタニック』だって沈没する巨大なスペクタクルっていうハッタリなんです」
澤田「3Dはロバート・ゼメキスもセンスがあると思いますね。僕が今まで見た中で一番凄いと思った3Dは『ポーラー・エクスプレス』で、思わずのけぞっちゃいました」
谷島「ゼメキスって、昔のホラー映画をいっぱいリメイクしてるじゃないですか。自身のレーベルをわざわざ立ち上げて(笑)。基本的な発想が“B級の楽しさ”なんですよ。3Dは、B級的な遊び心がないと使いこなせない。B級的な楽しさを、リアルな臨場感を高めてA級にしていく。B級の発想をもって臨んだ方が3Dは面白くなるんです。『ライフ・オブ・パイ』はA級すぎるんです。そこのところのバランスが難しいですね」
澤田「3D映画は奥行とよくいいますね」
谷島「奥行きだけの映画ってつまらないです。僕が心がけているのは、スクリーンの奥と手前をちゃんと使いこなせるかどうか。奥行きもあって、さらに飛び出さないと。『アバター』ってワンカットたりとも飛び出さないんですよ。3D映画って飛び出さないと満足度がないんです。とはいっても飛び出してばかりだと単なるアトラクションでしかない。だから適度に忘れた頃に飛び出すと満足度が違います。スクリーンの手前を使いこなせないとダメ。『アバター』以降アメリカ映画は飛び出さないんです。『カールじいさんの空飛ぶ家』も良い映画なのに、ダイナミックに飛び出さない」
澤田「僕も『カールじいさん』は3Dで見たはずなのに、それが3Dだったことを忘れるほど3Dの印象が残っていないですね」
谷島「ですよね。僕がこれだ!と思ったのは『塔の上のラプンツェル』です。ハリウッド映画で飛び出すのはあれが初めてじゃないかな。あと『マダガスカル3』。あれもバンバン飛び出します。どっちもアニメですが。大抵の3D映画は奥行しかなくて3Dじゃないですね。ちゃんと工夫された飛び出しが15分に1回くらいないと、物足りないし、観客は満足しない」
澤田「谷島さんの心に残ってる3D映画は何ですか?」
谷島「自信満々な発言になってどうも嫌なんですけど、『戦慄迷宮3D』と『ラビット・ホラー3D』をやっちゃってるので、3D映画の設計として、これを超えるものに大きく言うと会ったことがないんですよ。三池崇史の『一命』もいいところはあるんですけど、3Dを意識させてくれないんですよね。『ALWAYS 3D』なんかも、3D映画としては『ラビット・ホラー3D』の方が僕は上だと思ってるんですよ。映画として『ALWAYS 3D』は、その年のベスト級の映画ですが(笑)。心を揺さぶられました。だけど3Dとしては『ラビット・ホラー3D』の方が上です。B級として開き直りながらエンターテインメントを追求しつつ、リアルな臨場感を高めていくのが3Dだと思います」
澤田「今、3Dが下火だという声もありますが」
谷島「アメリカでは、去年から今年にかけて70数本3D映画が作られてて、ハリウッドの大メジャー作品、フランチャイズ映画が軒並み3Dになってるんです。そういう意味ではもう映画の主流は3Dなんです。かたやヨーロッパでも凄い映画人たちが3Dを撮ってるんです。ドイツのヴェルナー・ヘルツォークもヴィム・ヴィンダースも3Dで撮ったじゃないですか。いま、80歳を超えたジャン=リュック・ゴダールがフランスで撮ってます。第一線のエンターテインメントの映画が3Dで成立して、かたやそれに相反するアーティストが撮る3D映画が続々と出ている。両極の3Dが出てるということは、もう進化するしかない状況なんです。3Dは2Dと違って“空間の情報”が山のように入ります。日本でもこれからクリエーターの中でより流行っていくと思いますよ。そういう意味では3Dは下火ではなくて、むしろ成熟期ですね。さまざまな挑戦が全世界であります。そのひとつがドキュメンタリーという分野。あらたな可能性、3Dの扉を開いたんです」
澤田「ヘルツォークの映画はどこが良かったですか?」
谷島「3Dのスペックを完璧に使いこなしていたんですね。世界最古の洞窟壁画を3Dで撮ってるんですよね。岩肌のトリックアートを撮ってる。こっち側から見ると落書きにしか見えないのに、あっち側から見ると獣に見える。カメラがゆっくり動くと獣の絵がはっきり浮き出てくる。この臨場感は2Dで見るとその空間における、凹凸などが的確に感じ取れない。平面に絵を描くものではなくて、ごつごつしたものにどうやって昔の人間が絵を描いて、それがものすごい優れた筆跡であることを3D映像が映し出すんです。ヘルツォークは、直感で3Dだと思ったんでしょうね。彼はその1年前に『アバター』を見て失望してるんです。“俺は死んでも3Dは撮らん!”といったのに、彼が3Dを撮ったというのは、3Dの必然性が瞬時に解ったんです。今、メジャーからアーティストまで、マイケル・ベイからヴェンダースまでが3Dを作ってる時代ということなんです」
澤田「なるほど」
谷島「今のこの現状を、かつてのCGの歴史に照らしあわせるとわかります。初めて全編CGで作られた映画は何かわかりますか?」
澤田「『トロン』(82)ですか?」
谷島「その通り。『トロン』が初めて全編CGで、それから10年の月日を経て『ターミネーター2』(92)が生まれて、『ジュラシック・パーク』(93)が生まれたんです。まだ現3Dというのは『トロン』の段階なんです。ただ、10年もかからず、これからあと数年で『ジュラシック・パーク』が現れるんです。そこで日本でも、欧米に遅れること数年、3Dが全盛期になるでしょう。ただ、その頃には恐らく“裸眼3D”の時代になっているでしょう。メガネからの開放が真の3D世紀になります。それは遠くないです」
澤田「ニンテンドー3DSはメガネをかけなくても飛び出しますよね。びっくりしました」
谷島「ニンテンドー3DSの画面は小さいですが、東芝は裸眼で見られる3Dテレビを出してます。このスペックを大スクリーンに広げることを技術者が研究してます。あと2・3年もすれば実現しますよ。そのころに、裸眼デジタル3D映画の第1作目を日本で僕が作ろうと思ってます(笑)」
澤田「どうして谷島さんはそこまで3Dにこだわるんですか」
谷島「灰原光晴さん(『3D世紀』共同著者/3Dスーパーバイザー)も言っていたんですけど、3Dって何度見ても飽きないんですよ。それに尽きちゃう。僕が目指している映画は”体感映画”なんです。観客にスクリーンの中の登場人物と同じ時間を生き、興奮させたいんですね。それをするためには2Dが3Dになって行ったのは、私にとって必然なんですよ。リアルな臨場感が増し、スクリーンに吸い込まれますから。そういう意味で究極の体感映画が3D映画なんです。スクリーンの登場人物と同じ時間を生きる時間を与えたい。そこから3Dに行き着いたのは自然なことです」
澤田「今日はありがとうございました」
谷島「こちらこそありがとうございました」
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谷島正之さん略歴
1967年東京生まれ。90年にアスミック・エースに入社。3D映画がまだ今ほど普及していなかった時に『スパイ・キッズ3-D:ゲーム・オーバー』の宣伝を担当、いち早く3D時代に先鞭をつけた。プロデューサーとして、2009年にアジア映画史上初となる長編デジタル3D映画『戦慄迷宮3D』を製作、同清水崇監督と2011年には『ラビット・ホラー3D』を製作した。昨年は『ヘルター・スケルター』を共同製作し、宣伝プロデューサーとして『のぼうの城』を大ヒットさせている。