『スリープレス・ナイト』
主演 トメル・シスレー
監督 フレデリック・ジャルダン
脚本 ニコラ・サーダ インタビュー
9月15日(土)よりフランス映画『スリープレス・ナイト』が公開される。ひとつのナイトクラブを舞台に、麻薬の入ったカバンを巡って、息子を誘拐された一人の刑事を軸にして、麻薬の売人や警察、マフィアなど、様々な登場人物たちが交錯する眠らない一夜を描くスリリングなノンストップクライムアクションである。ハリウッドでは早くもリメイクが決定しており話題を呼んでいる本作。この公開を前に、主演のトメル・シスレー、監督のフレデリック・ジャルダン、脚本のニコラ・サーダにインタビューした。
--まずは、来日の感想をお聞かせください。
監督「東京に来られて光栄だ。バスから東京の町を見て、とても興奮したよ。いい意味で衝撃を受けている」
トメル「自分が知らないところに来たという感覚を味わってるよ。これが最初で最後にならなければいいね」
脚本「小津、黒澤、北野武の映画で日本は知っていたけれど、実際に来ることができて嬉しい。東京という都市はひとつの都市の中に色んな色彩が感じられる。そこが他の大都市とは違うね」
--トメルさんはこの映画に出ようと思ったきっかけと、監督がトメルさんに決めた理由は何でしょうか?
トメル「決め手はシナリオがよく書かれていたことだね。すごく緻密で、映画的にどんな風になるのかも簡単に想像することができた」
監督「トメルにした理由は彼に演技力がなかったから(冗談)。彼はフィジカルな演技もできるし、メンタルな表現もできる。両方できる人は極めて少ないから、出演をお願いしたとき、トメルがいい返事をくれたのは嬉しかった。今まで映画の中であまり見たことのない顔ぶれを使うことも重要だと思った。どこかにヒーロー性を持っている人、犠牲的精神、それをトメルは持っている気がした」
--真下から撮ったり真上から撮ったり、あのカメラにはどのような効果があったのでしょうか?
監督「よりリアルにみせる効果を狙ったんだ。主人公の動きと一緒にカメラが動くことで、主人公のフィジカルな演技を効果的に表現することができる。コカインを屋根に隠すシーンでも、ああいった動きの部分に関しても見ている人が本当に近くで見ているような効果を狙うためにああいったカメラの使い方をしたんだ。映画全般の中で混沌とした雰囲気をできるだけ増幅させる効果を狙ってね。見ている方も主人公がどんな状態になっているのか混乱を狙っている。彼があの中で求めていたのは出口と光だ」
--ナイトクラブのダンスホールのシーンはすごいエキストラの数ですが、どのような苦労がありましたか?
監督「すべての演出は限られた空間の中にいかに混沌とした空間を作り上げるかというところにかかっていた。混乱を作ることにはエネルギーが必要で、そのひとつがエキストラだ。場合によっては600人のエキストラを使っている。他にも、アシスタントの力も必要だし、カメラや編集の力も必要だ。ナイトクラブの音楽と映画の音楽を重ねてみたりもした。混沌とした場面を作るまで、色んな人たちが一体となって、ミルフィーユのように何層も色々な要素を積み重ねて作り上げているんだ」
--トメルさんは、演技面で何か心がけていたことはありますか?
トメル「スクリプターが説明はしてくれるけれど、作品を撮るときは物語の順番通り撮るわけではないから、物語が進むたびに傷も深くなって行くことを自分の中でいかに持続させるかを意識して演じた。痛みとか焦燥感は自分が継続的に演じていかなければ伝わらないものだからね。一番大変だなと思ったのは冷蔵室のシーンだ。あれに関してはワンシーンをワンショットで撮っていて、自分としては嘘っぽく見せたくないんだけど、本当に力を出すと女性に怪我をさせてしまうから大変だった。彼女に”どこか痛めたところはないか?”って聞いたら”どこも痛くない”って言ってたけど、本当はどこか痛めていたと思うな」
--ハリウッドでリメイクが決定したことについて感想をお願いします。
監督「ワーナーが買ったんだけど、混沌とした雰囲気、破壊的な雰囲気まで描けているかどうかは期待していないな。実は韓国の映画会社からもリメイクをしたいというオファーがあったんだけど、韓国版『スリープレス・ナイト』にも興味があったな」
トメル「作品を認められたってことだね。主役は、ダニー・デヴィートかジャック・ブラックにやってもらいたいね。僕とは真逆だけど、実は誰が演じるのかはだいたいわかっていて言えないんだ」
ニコラ「映画づくりは大変な仕事だからリメイクができるのは嬉しく思う。ワーナーが買ったということは世界的にも商品として売ることができる価値を認めたことだと思う。ただ、僕はアメリカがフランス映画をリメイクして良い映画だった例を知らないからね。アメリカ映画はオリジナリティが枯渇している状況かもしれないね。コミックを原作としたものが多くて、なかなかオリジナル作品が出にくい状況がアメリカにあるかもしれない。脚本を書いているときに、プロデューサーが”ちゃんといい作品にしたらアメリカでリメイクされるかもしれない”と言ってて、そのときは冗談として受け止めていたけど、それが現実になったということは、作品を認められたということだよね」
『スリープレス・ナイト』は、スリリングなアクションの中にも見られる主人公の焦燥感が秀逸なフィルムノワール。一人の父として、息子のために命がけで戦い、息子のヒーローとなっていく主人公の姿には痺れる。9月15日(土)より全国ロードショー。