2005年殿堂入り発表 (映画史博物館)
ヒラリー・スワンク
「ミリオンダラー・ベイビー」
≪選出理由≫ いい人すぎるキャラクターだが、そこが良い。彼女の笑顔を見るとホッとする。悲惨な生活だけれども、悔しい顔は見せない。成功して母に家を買って、とても優しいが、現実は思うようには行かず、後半からはシビアなタッチに。アクティブかつ精神的な演技力が必要とされるこの難役をクリアした。
チャン・ツィイー
「SAYURI」「オペレッタ狸御殿」
≪選出理由≫ 中国人にして日本人の役。映画をみていて、彼女を日本人と錯覚することは決してないけれど、あの物語の舞台となる架空の都のヒロインとしては彼女以外には考えられないほど、ただならぬ存在感を見せつけた。「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーを見たアメリカ人の気持ちがわかる気がする。
ジュリー・デルピー
「ビフォア・サンセット」
≪選出理由≫ 前作「恋人までの距離」から本当に9年の年月が流れた。ほとんどのシーンが長回しで、延々と会話を続けるだけのこの作品で、しゃべり方やしぐさなど、良い具合に年を取った30代後半女性のリアルな等身大の魅力を発揮、地味ながらも、まるでそばにいるかのような親しみやすさを評価したい。
レオナルド・ディカプリオ
「アビエイター」
≪選出理由≫ アカデミー賞会員に妬まれているスターといわれている彼だが、巨匠スコセッシは彼の演技力を認めている。「アビエイター」での奇人ぶりはただものではなく、飛行機に熱中する様や、潔癖性ぶり、同じ言葉を連呼する姿など、主人公の性格描写そのものが核となる作品で、彼は見事演じきった。
ポール・ジアマッティ
「サイドウェイ」「シンデレラマン」
≪選出理由≫ 「サイドウェイ」でのダメ男っぷりがいい。会話が長続きしない様子など、見ている観客までも共感して自分がダメ男なんじゃないかという気になってしまうほどわかりやすい。それ以上においしかった役が「シンデレラマン」でのトレーナー役。主演のラッセル・クロウを食うほどの存在感だった。
クリスチャン・ベール
「バットマン・ビギンズ」「マシニスト」
≪選出理由≫ 2005年、本当に頑張った旬の俳優だ。それまでの「バットマン」シリーズの型にはまらない全く新しいダークヒーロー像を作り上げた。また「マシニスト」での体重操作ももはや人間業ではなく、B級あがりの俳優でありながらも実に堂々と構えており、その風格からは自信も感じさせた。
≪2005年総評≫
間違いなく、この年最も目立っていた映画は「ミリオンダラー・ベイビー」である。アカデミー賞授賞式の時点ではまだその評価は日本では未知数で、これがオスカーを取ったのはクリント・イーストウッドがアカデミー賞に気に入られていたからだという声が多数あがったが、フタを開けてみると誰もが納得。静かなる感動を呼ぶこの傑作は、見た人ほぼ全員が支持し、日本でも総合的に最も人気の高い映画となった。俳優部門も、ヒラリー・スワンクは文句なしの殿堂入りであろう。
2005年の主な注目作品は、アメリカ映画では、「バットマン・ビギンズ」、「宇宙戦争」、「アビエイター」、「エターナル・サンシャイン」、「シンデレラマン」、「オペラ座の怪人」、「キングダム・オブ・ヘブン」、「クローサー」、「きみに読む物語」など。CGアニメは「チキン・リトル」、「シャーク・テイル」、「ロボッツ」などが公開された。「スター・ウォーズ/エピソード3」は壮大なるスペースオペラの完結編とあって、この年の話題をおおいにさらっていった。ティム・バートンは「チャーリーとチョコレート工場」と「コープス・ブライド」の2本を手がけて元気の良い1年だったが、一方ウディ・アレンも「さよなら、さよならハリウッド」と「メリンダとメリンダ」の2作品がやっと輸入されて、ミニシアターを賑わした。また、主役級ではないがシャーリー・マクレーンが「イン・ハー・シューズ」と「奥様は魔女」に出ていたことが印象深い。
日本映画では「ALWAYS 三丁目の夕日」が大ヒット。日本中が涙した。この他「男たちの大和/YAMATO」、「NANA」、「電車男」などが話題になり、オダギリジョーは「メゾン・ド・ヒミコ」、「SHINOBI」、「オペレッタ狸御殿」など大活躍の1年だった。また、シネマガでも独占インタビューした緒方明監督の「いつか読書する日」が高く評価されたことも特筆に値する。ちなみにこの年は「THE JUON/呪怨」、「ダーク・ウォーター」、「ザ・リング2」など、メイド・イン・ハリウッドによるジャパニーズ・ホラーが流行った年でもある。キネマ旬報ベスト・テンでは井筒和幸監督の「パッチギ!」が1位になった。
日米以外では、スペインのアレハンドロ・アメナーバル作「海を飛ぶ夢」とペドロ・アルモドバル作「バッド・エデュケーション」、ギリシャのテオ・アンゲロプロス作「エレニの旅」、イギリスのマイク・リー作「ヴェラ・ドレイク」、ドイツのヴィム・ヴェンダース作「ランド・オブ・プレンティ」などが公開された。去年から勢いがまったく衰えない韓国映画界からは「私の頭の中の消しゴム」、「マラソン」、「大統領の理髪師」、「南極日誌」などが公開され、フランスからは「ある子供」と「コーラス」の他、ドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」が公開。最も話題になったのはドイツによるヒトラー映画「ヒトラー~最期の12日間~」と、香港の「カンフー・ハッスル」、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」あたりだろう。
「ミリオンダラー・ベイビー」
≪選出理由≫ いい人すぎるキャラクターだが、そこが良い。彼女の笑顔を見るとホッとする。悲惨な生活だけれども、悔しい顔は見せない。成功して母に家を買って、とても優しいが、現実は思うようには行かず、後半からはシビアなタッチに。アクティブかつ精神的な演技力が必要とされるこの難役をクリアした。
チャン・ツィイー
「SAYURI」「オペレッタ狸御殿」
≪選出理由≫ 中国人にして日本人の役。映画をみていて、彼女を日本人と錯覚することは決してないけれど、あの物語の舞台となる架空の都のヒロインとしては彼女以外には考えられないほど、ただならぬ存在感を見せつけた。「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リーを見たアメリカ人の気持ちがわかる気がする。
ジュリー・デルピー
「ビフォア・サンセット」
≪選出理由≫ 前作「恋人までの距離」から本当に9年の年月が流れた。ほとんどのシーンが長回しで、延々と会話を続けるだけのこの作品で、しゃべり方やしぐさなど、良い具合に年を取った30代後半女性のリアルな等身大の魅力を発揮、地味ながらも、まるでそばにいるかのような親しみやすさを評価したい。
レオナルド・ディカプリオ
「アビエイター」
≪選出理由≫ アカデミー賞会員に妬まれているスターといわれている彼だが、巨匠スコセッシは彼の演技力を認めている。「アビエイター」での奇人ぶりはただものではなく、飛行機に熱中する様や、潔癖性ぶり、同じ言葉を連呼する姿など、主人公の性格描写そのものが核となる作品で、彼は見事演じきった。
ポール・ジアマッティ
「サイドウェイ」「シンデレラマン」
≪選出理由≫ 「サイドウェイ」でのダメ男っぷりがいい。会話が長続きしない様子など、見ている観客までも共感して自分がダメ男なんじゃないかという気になってしまうほどわかりやすい。それ以上においしかった役が「シンデレラマン」でのトレーナー役。主演のラッセル・クロウを食うほどの存在感だった。
クリスチャン・ベール
「バットマン・ビギンズ」「マシニスト」
≪選出理由≫ 2005年、本当に頑張った旬の俳優だ。それまでの「バットマン」シリーズの型にはまらない全く新しいダークヒーロー像を作り上げた。また「マシニスト」での体重操作ももはや人間業ではなく、B級あがりの俳優でありながらも実に堂々と構えており、その風格からは自信も感じさせた。
≪2005年総評≫
間違いなく、この年最も目立っていた映画は「ミリオンダラー・ベイビー」である。アカデミー賞授賞式の時点ではまだその評価は日本では未知数で、これがオスカーを取ったのはクリント・イーストウッドがアカデミー賞に気に入られていたからだという声が多数あがったが、フタを開けてみると誰もが納得。静かなる感動を呼ぶこの傑作は、見た人ほぼ全員が支持し、日本でも総合的に最も人気の高い映画となった。俳優部門も、ヒラリー・スワンクは文句なしの殿堂入りであろう。
2005年の主な注目作品は、アメリカ映画では、「バットマン・ビギンズ」、「宇宙戦争」、「アビエイター」、「エターナル・サンシャイン」、「シンデレラマン」、「オペラ座の怪人」、「キングダム・オブ・ヘブン」、「クローサー」、「きみに読む物語」など。CGアニメは「チキン・リトル」、「シャーク・テイル」、「ロボッツ」などが公開された。「スター・ウォーズ/エピソード3」は壮大なるスペースオペラの完結編とあって、この年の話題をおおいにさらっていった。ティム・バートンは「チャーリーとチョコレート工場」と「コープス・ブライド」の2本を手がけて元気の良い1年だったが、一方ウディ・アレンも「さよなら、さよならハリウッド」と「メリンダとメリンダ」の2作品がやっと輸入されて、ミニシアターを賑わした。また、主役級ではないがシャーリー・マクレーンが「イン・ハー・シューズ」と「奥様は魔女」に出ていたことが印象深い。
日本映画では「ALWAYS 三丁目の夕日」が大ヒット。日本中が涙した。この他「男たちの大和/YAMATO」、「NANA」、「電車男」などが話題になり、オダギリジョーは「メゾン・ド・ヒミコ」、「SHINOBI」、「オペレッタ狸御殿」など大活躍の1年だった。また、シネマガでも独占インタビューした緒方明監督の「いつか読書する日」が高く評価されたことも特筆に値する。ちなみにこの年は「THE JUON/呪怨」、「ダーク・ウォーター」、「ザ・リング2」など、メイド・イン・ハリウッドによるジャパニーズ・ホラーが流行った年でもある。キネマ旬報ベスト・テンでは井筒和幸監督の「パッチギ!」が1位になった。
日米以外では、スペインのアレハンドロ・アメナーバル作「海を飛ぶ夢」とペドロ・アルモドバル作「バッド・エデュケーション」、ギリシャのテオ・アンゲロプロス作「エレニの旅」、イギリスのマイク・リー作「ヴェラ・ドレイク」、ドイツのヴィム・ヴェンダース作「ランド・オブ・プレンティ」などが公開された。去年から勢いがまったく衰えない韓国映画界からは「私の頭の中の消しゴム」、「マラソン」、「大統領の理髪師」、「南極日誌」などが公開され、フランスからは「ある子供」と「コーラス」の他、ドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」が公開。最も話題になったのはドイツによるヒトラー映画「ヒトラー~最期の12日間~」と、香港の「カンフー・ハッスル」、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」あたりだろう。